金属加工・樹脂加工・その他加工

攻めの経営「儲かる製造業」に

精密板金とバフ研磨だけでコロナ禍にもかかわらず急成長を遂げ、年商約20億円をたたき出す企業がある。相模原市緑区橋本台にあるナンエツ工業は、中小製造業としては珍しい“攻めの経営”で急成長。儲かる製造業を実現する。ものづくりの最終工程に当たり、同業他社も内製化していない「バフ研磨」を武器に持つことで、あらゆる業界と接点を持つことに成功、板金の受注にもつなげる。同時に、新聞やネット媒体などを通じ「情報のアンテナを張り続ける」(内田修弘社長)という姿勢で、新規取引先になり得る企業情報の発掘にも注力。足で稼ぐ地道な営業を繰り返しながら、顧客を増やし続けている。今年3月には第四工場も本格稼働させた。

板金+バフ研磨で大きな差別化

■1枚からでも受注

半導体製造装置や工作機械などの部品をメーンに手掛ける。1989年に4人で始めたバフ研磨主体の町工場だが、今では従業員数100人規模にまで拡大。ここ数年、売上高が急増している。ベンディングマシンや溶接を担当する第四工場「峡の原工場」も新設し、計4工場となった。

強みの一つは「板金+バフ研磨」のビジネスモデル。板金では小物から大型まで、サイズを問わずワンストップ対応する。

「板金事業は、できない分野がないオールラウンドを目指しています。たとえ1枚からでも受けます。普通、当社のような規模の工場は断りますが、いずれは何かしら返ってきます」

バフ研磨も創業以来の強みとする。バフ研磨はものづくりで言えば最終工程の一つ。それを自社で手掛ければ、あらゆるメリットが生まれるという。

例えば、加工ニーズが幅広いバフ研磨をきっかけに、これまで接点がなかった企業・業界ともつながる。そこで板金事業も売り込め、新規受注のチャンスが生まれる。

また、板金部品の受注であっても、仕上げに当たる研磨を自社基準の品質でやることで「仕上がりがきれい」とお客さんに満足してもらい、リピートにつながるという。

■展示会にも出ず新規開拓

常時取引先は約60社。それも展示会などに出展することなく、毎年、新規を増やし続けている。同社の場合、営業人員を数人置いており、テレアポを主体に営業している。無論、内田社長が同行することもある。

代行やデジタルツールを一切使わない“アナログ営業”にこだわるという。「営業こそ自社でやらなければならないと思います。代行はすぐに見抜かれます。だったら、昔ながらのやり方ですが、靴底を減らしてでも出向けば気持ちが伝わります。本気度を見せないと信用してもらえませんから」と強調する。

また、常に新規営業先を発掘するため、新聞やウェブ媒体、取引先との何げない会話などからヒントを得ているという。

「待っていても仕方ありません。基本は情報のアンテナを張り、攻めることだと思います。確かに、新規営業をしても9割は決まりません。しかし1割が決まり、そこから継続すれば大きな結果になります」

■HP制作に500万円

ホームページも重要な新規営業ツールだが、同社は制作費用に500万円以上を投じている。

「自分がお客さんの立場で自社のホームページを見たら、どう思うかです。何年も更新していなかったり、簡単なものだったりすると、大丈夫かと思ってしまいます。だからこそ、当社はおカネをかけています」ときっぱり。

将来も精密板金+バフ研磨の業態を続け「若い人たちが輝ける職場にしていきたいです」と語っている。

(2023年4月号掲載)