3DCGと実写映像の融合―。映像制作ベンチャーのACW-DEEP(相模原市中央区南橋本)は、VR空間の3次元コンピューターグラフィックス(3DCG)の中に、リアルな映像を映し出せる独自開発の次世代技術「AVR(アドバンスド・バーチャル・リアリティー)システム」を本格展開する。ヘッドマウントディスプレイで目隠しされた状態でVRを見ると、車酔いの状態になったり、周囲の障害物に衝突したりする危険性がある。同技術は、現実の空間で見える自分の手や周辺の物などの実写映像をリアルタイムでVR空間に共存させる。これにより、リアル感や臨場感満載のVR体験が可能になる。

ACW-DEEP、より現実に近い体験可能に

専用のヘッドマウントディスプレイに内蔵された3Dカメラで周囲の映像を取り込み、高速処理してVR空間内に反映させる仕組み。VR空間内でCGと実写映像をリアルタイムで合成化する技術は特許も取得している。動きにも強く、例えば、自分の手を動かすと、VR空間内の自分の手も連動して同じ動きをする。

同社によると、既存のVRシステムは、視界に映る全てのものをCG化する必要がある。ただ、これでは人工的な仮想空間の中でしか体験できない。しかも、ヘッドマウントディスプレイを装着すると、リアルな世界と遮断されるため、周囲に机や壁があったとしても気付かない難点もあるという。

また、研修や教育分野で活用されているものの、その大半はゲームのようにコントローラーを使って操作している。

その点、同技術はVR内にいても、現実世界を認識し、自分の手足を動かしながら進められるため、より現実に近いVR体験ができるという。産業技術総合研究所(茨城県つくば市)で実施した実証実験では、同技術で「VR酔い」が軽減することも分かった。

■技能継承への活用も

すでに建築現場での安全教育や、製造業の技能継承分野で同技術を採用する動きが広がっている。今後は外国人の教育訓練や医療シミュレーション、芸能関係のバーチャルスタジオなどにも用途が見込めるという。完全受注生産で、1セット当たりの制作費用は300万~ 500万円。

山口聡社長は「次世代のバーチャルリアリティーとして発信していきたいです」と、今後の普及に意欲を示している。

(2021年2月号掲載)