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AI普及で需要急増、パワー半導体を量産へ 8インチSiC

台湾の半導体企業、エピシルテクノロジーズ(Episil、漢磊科技)は、2026年下期に炭化ケイ素(SiC)を用いた8インチウェハの量産を開始する。既存工場を活用して新ラインを立ち上げるもので、台湾では初となる8インチSiCの量産体制となる見通しだ。自動車や再生可能エネルギー、データセンター向けに供給を拡大し、日本市場への展開も本格化させる。

日本市場へも展開強化

パワー半導体は、高電圧や大電流を扱うことができる特別な半導体デバイス。これらのデバイスは、電力の変換や制御を行うために設計されており、中でも電気自動車(EV)や太陽光発電、家電製品など、さまざまな用途で使用されている。

同社は台湾新竹科学園区を拠点に1985年に設立された老舗ファウンドリー。パワー半導体の分野に特化し、シリコン(Si)に加え、ワイドバンドギャップ半導体であるSiCや窒化ガリウム(GaN)のデバイスを製造する。

一方、エピタキシャルウェハの製造はグループ企業のエピシルプレシジョン(嘉晶電子)が担当。同社は日本にも拠点を持っている。

今回の8インチSiC量産ラインは、TSMCグループのバンガード・インターナショナル・セミコンダクター(VIS)との協業で構築した。初期の生産能力は月1500枚規模とし、最大で3万枚規模まで拡張できる見込みだ。

AIの普及はデータセンターの需要を急速に拡大させている。その分、純粋なシリコンパワーデバイスよりもエネルギー効率が高いSiCパワーデバイスへの需要が高まっており、今後は日本市場への供給も進めていく。

徐建華・董事長は「世界市場の中で日本は重要な地域の一つ。現在、グループ全体に占める日本事業の割合は10〜20%ですが、これを3年間で倍増させていきたいです」と話している。

(2025年10月掲載)