「熱交換を通じて地球を救う」。創業以来、こうスローガンを掲げ実践する排熱回収システムのエンジニアリング企業、MDI(川崎市川崎区浅田)。その卓越した知見は、大手企業の担当者たちをもうならせ、コンサルティング契約を結ばせるほどだ。機運が高まっている省エネや地球温暖化対策について、岩澤賢治社長は「昔ながらの“超アナログ”が重要」という、温故知新ともいうべき持論がある。そんな同社が開発した高効率の除湿冷房は、地下水(井水)を有効活用することで、エアコンの1割以下の消費電力で大容量の冷風を提供。「二酸化炭素(CO2)削減の決定版」とされており、電気代が高騰する中での夏場を迎え、なくてはならないものとして引き合いが絶えない。
温暖化対策の「決定版」販売
■「地球を暖めている」
東日本大震災以降、大手企業を中心に省エネや地球温暖化防止への取り組みが加速する。今は電気代が大幅に上がっていることもあり、中小企業間での関心が高まっている。
ただ、どんなに優れた省エネ性能、省エネ機器などを導入しても、「排熱」を減らすか有効活用しなければ、結果的に「地球を暖めている」(岩澤社長)ことになる。温暖化の抜本的な解決にはならないという。
例えばエアコン。省エネをうたっていても、使用すると室外機から絶えず熱が放出される。ほかにも、給湯器やデジタル製品...。日常生活で何気なく使うものにも排熱があり、多くが捨てられている。まして企業の場合、未利用のまま大量の熱エネルギーが廃棄されているのが実情だ。
「実際に工場を視察すると、まだまだ多くの熱をむやみに排出していることが多く見受けられます。『お金をかけて地球を暖めているのではないか?』と思われるほどです。その多くは『熱交換』が最適化されていません」と岩澤社長。同社では熱回収システムのエンジニアリング事業を通じ“最適化”の普及に努めている。
■夏場の救世主にも
2018年5月に高効率の熱交換システムを搭載した、超高効率の空気冷却(または暖房用)システム「下げろ!デマンド君HYPER」を開発した。これは昔の人たちが使っていた地下水に着目したシステムだ。
工場の敷地内にある地下水(17~18度程度)を活用し、独自設計を施した熱交換システムにより、24度程度の除湿された冷風を出す。地下水がない場合は冷水装置でも代用可能。無論、排熱も出さない。1台で一般的な大型エアコン(20畳タイプ)の約5倍という大容量の冷風が、1割以下の電気代で絶えず供給できる。
また、使っていく中でフィルターに発生する付着物(グリスや切削油、食品油など)と汚れは、強アルカリながら触っても安全という独自開発の洗浄剤「ダイナミックGC-S」で簡単に落とせるという。
「(同システムの)開発当初は数台の販売しか見込んでいませんでしたが、初年度でいきなり100台の注文がありました」。現在はコア技術を、外部企業3社に供与し、独自ブランドでの製造・販売を任せることにした。今では年間で累計300台以上出ている。
溶接工場やクリーニング工場、大手自動車部品メーカー、半導体関連メーカーなど、業種・企業規模を問わず採用され、最近では農業分野にも広がっている。
これから夏場を迎える。除湿冷房で職場環境を快適にしたいが、電気代は頭の痛い問題。そうした企業にとって救世主になることは間違いなさそうだ。