金属微細加工を手掛ける松浦製作所(東京都大田区南蒲田)は、新たに5軸のマシニングセンタを導入するなど新技術、新事業創出に向けた挑戦を重ねている。超微細加工や難加工材の精度を向上させ、医療関連部品の試作にも進出、他社との差別化を図る。同社は「お客さんの頭の中にうちのブランドをつくる」と、さらなる飛躍を誓っている。

設備投資で海外進出も視野

■大田区の「優工場」

1940(昭和15)年創業。微細加工の分野に進出したのは20年ほど前。2006年には大田区から他工場の模範となる優れた工場を認定する「優工場」に認定された。

溝幅わずか30マイクロメートルのミーリング加工や、粒状の砥石を固める前の砥粒(とりゅう)を用いて研磨を施す鏡面ラップ加工など、切削を中心とした微細加工を得意とする。

ほかにも、チタンやインコネル、ハステロイといった難削材加工や、直径50ミクロンの旋盤加工も手掛ける。

取引先は装置メーカーや研究開発機関が多く、年間1000~1500件の加工をこなす。毎年2月に横浜で開催される工業技術見本市「テクニカルショウヨコハマ」をはじめ、加工技術に特化した「大田区加工技術展示商談会」や医療系展示会の「メドテック ジャパン」にも、大田区と共同で出展した実績を持つ。

これまで、スマホやハードディスク部品の加工を多く手掛けてきた同社だが、展示会に出展するたびに「松浦さんは医療関連部品の試作が向いている」と、他企業の出展者やブース来場者が提言。これを受け入れ、事業再構築補助金を活用して5軸のマシニングセンタを導入し、本格的に着手することになった。

この設備を用いれば、外科手術で使われるインプラントや血液分析用機械向けの部品などを試作することが可能という。松浦貴之社長は「医療関連部品は、精度や表面の粗さが問われ、繊細な技術が必要とされます」と語っている。

■海外展開も視野に

海外展開も視野に入れる。「精度が問われるような世界であれば勝ち目がある」(松浦社長)と意気込む。社員がX(旧Twitter)で情報発信に努め、そのフォロワー数は7500人を抱えるなど、広報活動も順調だ。

「投入した5軸マシニングセンタを使いこなして業界内外にアピールし、新規受注の獲得につなげたいです」と、今後の展望を語る松浦社長。BtoBに加え、BtoCのニーズもにらみながら事業拡大をもくろむ。

(2024年2月号掲載)