金属加工・樹脂加工・その他加工

高度な溶接技術を異業種に拡大 水処理やデータセンターへ

配管工事業、飯尾工業所(横浜市鶴見区鶴見中央)が、主力の地域冷暖房配管工事で蓄積した高度な溶接・配管技術を生かして、新規分野の開拓を進めている。官公需が中心となる水処理施設や、先端IT関連企業のデータセンターなど、異業界の施設工事を開拓し、売り上げの拡大と安定を図る。優れた技能職を確保するため、女性を含めた若手の採用・育成や環境改善にも取り組む。

若手も活躍「溶接は奥深い」

同社は1969年設立。溶接事業からスタートし、現在は配管工事全般に業容を拡大している。社員は50人以上いるほか、外部の個人事業主を合わせると200人ほどの配管と溶接技能者を擁する。

工作機械や半導体製造装置など、あらゆる精密作業の位置決めに使用されており、同社製品は世界的半導体企業や関連産業で採用され

受注先は一般的なオフィスビルなどの空調・給排水設備だけでなく、地域全体で熱を補う「地域冷暖房システム」の配管溶接工事を得意とし、首都圏を中心に、横浜のみなとみらい21地区や大手町地区など豊富な施工実績がある。

大規模開発の配管工事を受注するため、「欠陥がない溶接」(渡部利伊社長)を求めており、実際にレントゲン検査で内部にダメージがないことを確認するレベルを維持。加えて、工期短縮のため「他社より溶接作業が速い」(同)とする熟練工を多数抱える。

こうした高度な技術を生かし、今後は普遍的に信頼性の高い稼働が求められる水処理施設や、コンピューターへの水漏れが絶対に許されないデータセンターなどの工事を積極的に受注していく。

業界全体で技能者不足が顕著になる中、積極的な新人採用や教育にも注力する。具体的には、配管工事のイメージを刷新するような会社紹介ホームページを作るとともに、入社直後からJIS溶接技能者の資格を取れるよう高度な現場教育を行う。

一般的に建設現場では、施工会社が一人親方の配管工や溶接工を使う。ただ、一人親方はあくまでも「個人事業主」であるため、年金や健康保険など社会保障制度に加入しないケースが多く、問題になっている。

業界全体で一人親方解消の動きがある中、同社でも「率先して(業界の)イメージを変えたいです」(渡部社長)と、グループで一人親方の正社員化を進めている。

現場では「溶接女子」も活躍する。2024年9月に入社した佐藤理奈さんもその一人だ。

秋田出身の佐藤さんは、もともと手先が器用だったこともあり、大のモノづくり好き。直近まで北海道の発電所の現場に勤務していた。

その中で目にしたのが職人による溶接技術。「すごいと感じ、私もやってみたいと思うようになりました」。決定打になったのは渡部社長が出演するYouTubeチャンネルを見たとき。溶接工になる決意を固め、単身上京した。

現在は、熟練職人たちに囲まれながら腕を磨く日々。「溶接は奥深いものです。いずれは大きいものの溶接に挑戦したいです」と語る。

(2025年1月号掲載)