バイオクロマト(藤沢市本町)は、飲料や食品が放つ“香り”の変化を、AI(人工知能)などを駆使することで、リアルタイム分析ができる装置を開発した。同社で販売中の香り分析装置「ボラタイムシップ」の次世代モデル。大学との共同研究により、香りをキャッチする感度を従来比で10倍にしたのが特徴で、いわば“高感度な人工の鼻”という。食品や飲料メーカーなどで、新商品開発に役立てられるとしており、すでに大手企業2社から受注した。
アロマや消臭剤の開発に需要
食品が持つ香りには、さまざま成分が含まれている。しかし、その中のどの成分(分子)が人間にとって「よい香り」か「嫌な香り」なのかを特定する方法がなかった。そのため、最終的には人間の鼻に頼る部分が大きかったという。
新装置では、食品の香りをチューブで送り込み、装置内で放電することでイオン分子化。独自開発した解析ソフトを使うことで特定したい香りの成分を割り出す。「においを完全に“見える化”します」(木下一真社長)としている。
同装置の活用例として、食前・食中・食後に香気成分がどう変化するかや、アロマ、消臭剤、化粧品の新商品開発などを想定する。「香りをリアルタイムで計測したいというニーズはたくさんあります」と木下社長。
価格は1000万円から。初年度1億円の売り上げを計画する。国内で生産し、海外では現地代理店を通じて販売していく。
■装置輸出は20カ国へ
同社は理化学製品を製造販売する企業。製薬会社や研究機関などで研究員が試料を前処理する際に用いる「濃縮装置」が主力製品の一つだ。
2013年に発売した濃縮装置「コンビニ・エバポ」シリーズは現在、世界約20カ国に輸出されている。新型コロナウイルスの感染拡大で、国内外の市場は止まりつつあるが、経済活動が回復しつつある国々からの注文が相次いでおり、業績好調をキープしている。
従業員16人の同社の製品が海外に広く普及できた理由が、現地代理店を巻き込んだ販売戦略。海外展示会には年2、3回、コンスタントに出展するほか、代理店発掘にも知恵を絞る。
同社の場合、自社と業容が近い大手企業のホームページにある「海外代理店一覧」に着目し、そこにコンタクトして自社製品も扱ってもらうように働きかけている。
「すでに日系企業と取引がある現地代理店なら、日本の商習慣も知っていて話が早いです」(木下社長)と語る。現在、海外事業の売上高比率は2割程度だが、数年後には5~6割に高めるとしている。