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電子機器、遠隔地から自動復旧

 

電子機器を使う限り、突如として動かなくなってしまう「フリーズ」は避けられない。パソコンやルーター、家電製品…。あらゆる機器でフリーズは起こり得る。特にインフラ設備がフリーズしてしまったら大問題にもなる。こうした中、川崎のベンチャー企業、バリューソリューションが画期的な装置を開発し、注目されている。「電子機器が止まってしまう原因の9割は、故障ではなくフリーズによるもの」とし、それを自動的に検知し、強制的に再起動。短時間で復旧するシステムだ。保守費用などが大幅削減できるとして、あらゆる産業で採用が進む。2025年までに新規株式公開(IPO)も見据える。

フリーズ対策で注目技術

「NONフリーズ」と名付けた同装置は、Wi-Fiルーターや監視カメラ、パソコン、サーバーなど、主にネットワーク接続する電子機器とつなげる。万が一、対象機器がフリーズしたら、現地に急行しなくても自動検知で復旧させる。

同社によると、あらゆる電子機器は、外部環境から放出されるノイズの影響でフリーズが起こる。

ただ、専門家でない限り「機器が動かない=故障」と捉えてしまい、電源を抜き差しして“強制再起動”させようとしても、どこを操作すればよいか分からない。そのため、保守会社などは人員を出張させる必要がある。

■移動1泊2日、作業10分

同製品の開発もそんな経験に起因する。12年3月、同社の関連会社が三陸鉄道・久慈駅(岩手県久慈市)に設置したデジタルサイネージ(地域防災情報)がフリーズした。当時は東日本大震災の翌年。周囲も防災情報にとても敏感になっていた時期で、早期復旧が急務だった。しかし、電話で駅員に再起動をお願いしても「よく分からない」と言う。そこで、日野利信社長が行くことになった。

とはいえ、川崎から現地まで、移動だけで往復1泊2日はかかる。ようやく現地に着いたものの、再起動のみで完了。作業時間はわずか10分だった。「これでは割に合わない…」と、日野社長は痛感したという。

もともと大手電機メーカー、パイオニア出身のエンジニア。他にも同じようなケースがないかと調べていくと、「電子機器が停止する原因の約90%は、機器内に搭載したOS、アプリケーションのフリーズによるもの」ということが分かった。実際、メーカーも困っていた。そこで同装置の開発に至った。

■25年までに上場へ

装置の肝となるのは、「PORT監視」の技術。従来、電子機器の死活監視の分野では、機器本体のフリーズを検知できる「PING監視」が採用されてきた。だが、これでは内部にあるOSやアプリケーションのフリーズまでは判別できない。

それに対し「PORT監視」は、OSの異常やアプリケーションが正常に稼働していない状態まで検知できる。同社はこの技術を使用したフリーズ監視システムで特許を取得し、日本初のPORT監視装置を誕生させた。

16年末に発売。すでに累計1500台を納入した。鉄道や宿泊施設、病院など多岐にわたる。ある宿泊施設では、フリーWi-Fiがフリーズするたびに宿泊客からの苦情が殺到。保守会社も対応に追われていた。しかし、同装置の設置後はピタリと止まり、保守の出動回数も減った。IoT(モノのインターネット)時代とされる現在、「(同装置を)使える業界は実に広いです」と、日野社長は語る。

設立以来、急成長を遂げており、21年4月期の売上高は前期比8倍超を見込む。25年4月期までには売上高26億円を目指している。

(2021年8月号掲載)