住まいの産業 / ライフサイエンス

障がい者の「住」インフラに貢献

トライアングル(横浜市港北区新羽町)は、介護・福祉分野に強みを持つ建築会社。住宅に手すりを取り付ける「介護リフォーム」から始まり、設立15年目に入る現在は「障がい者グループホーム」を県内に延べ15棟新築するまでに事業を拡大した。社内でも設計職などで障がいを持つ社員が活躍、申請書など膨大な事務処理は優秀な女性パート陣が支える。障がい者の「住」のインフラが不足する日本の状況の中、スタッフ一人ひとりが活躍し、障がい者グループホーム市場を開拓している。

介護リフォームも展開

■3人で設立、社名の由来に

名和靖晃社長は2009年に45歳で独立、大学時代の友人・河端浩之さん、福祉機器関連の前職の部下・斎藤小百合さんと3人で「トライアングル」を設立した。一級建築士の資格を持つ名和社長、税務を知る河端さん、福祉に強い斎藤さんがそれぞれの専門知識を持ち寄って始めた会社だ。

最初は前職の人脈から得た介護リフォームの施工の仕事をこなし、「毎日毎日、ひたすら手すりを取り付けていました」(名和社長)という。

設立当初から障がい者福祉の仕事にも関わり、福祉関連の建物の修理などを担当した。

■切実な住居問題

介護・福祉分野の経済活動は国がルールを定めている。同じ設備を納入・施工するのでも、高齢者介護の「介護保険法」と、障がい者福祉の「障害者総合支援法」では市場の仕組みが異なる。同社は実務の中で経験を積んでいった。

特に障害者福祉は関わる人の少ないニッチ分野と思われがち。「横浜市で障がい者手帳を持っている人は全体の4・5%もいるのに、みんな目を向けたがらないんです」(同)。中でも障がい者の住居の確保は切実な問題で、障がいの内容に応じて対応するグループホームには「入居を希望しながら待機状態にある人が3000人」(同)に達しているという。

■ワンストップの対応力

同社の障がい者グループホーム事業は、ワンストップの対応力が特徴。まず行政やグループホームの運営会社と連携して、どこにどんなグループホームが必要かを考える。障がいは内容や程度が千差万別で、車いす生活者がいるかいないかなどで必要な設備や支援内容が大きく変わる。

一方で、土地や建設資金を提供するオーナーを見つけるには、社会的な意義だけでなく、高い利回りという投資メリットで説得しなければならない。障がいの種類・程度が近い入居者を集めて最低限のコストで建築する必要がある。

同社はこのすべての作業に対応し、障がい者グループホーム新築の実績を積み重ねてきた。現在、社員はパート含め27人、リフォーム・新築を中心に福祉機器販売や省エネ・省電力対策などメニューを広げ、売上高は5億円を超えた。

(2023年11月号掲載)