金属加工・樹脂加工・その他加工

鋳造部品、高付加価値化で販路拡大

日研機材製作所(東京都大田区東糀谷)は、工場を持たないファブレス企業ながらも、高精密な鋳物部品を展開する。電子顕微鏡や医療用装置といった最先端分野からコンスタントに受注し、コスト競争とは一線を画す。同社は高額な設備投資を必要としない検査・仕上げと品質保証、営業に特化。その一方で、生産では北関東を中心とする協力企業約80社とのネットワークを活用する。鋳造業者でこうしたビジネスモデルは珍しいという。

ファブレスながらも実現

アルミ鋳物を中心に、鉄やダイカスト、ステンレス鋳造などを手掛ける。少量多品種で年間500~600種ほどの部品を生産する。

注力するのは高精度の鋳造部品。例えば、電子顕微鏡の箱枠や血液検査装置の部品などを納入する。

中でも電子顕微鏡の箱枠は、内部を真空状態にする必要があり、わずかな空気漏れも許されない。そのため、板金部品ではなく、漏れがない鋳造部品が使われている。それも、リークテストをクリアした鋳造部品でないと採用されない。同社ではメーカーの設計者に営業、ヒアリングし、後加工まで終えた“完成品”の鋳造部品を納入している。

生産では、金型製作から鋳造品の機械加工、表面処理までを手掛ける協力企業のネットワークを構築。「当社はファブレスの商社的な会社ですが、すべて品質を担保しています」と高橋正徳社長。そのため、協力企業に対しては、年数回の監査を実施している。「協力企業を選ぶ際は、必ず工程管理がしっかりできているかを確認します。そうした企業は5Sもできています」

一方、営業はメーカーの設計者に鋳造についてレクチャーできるほどの、知識と経験が豊富な人材が担当することで「(メーカーと)対等に話ができるようになります」としている。

■ものづくり連合の構想

1937(昭和12)年創業の老舗。ものづくりに長く携わってきた経験から、高橋社長は「これからは、中小製造業が1社単独で生き残るのは難しい時代になります」と分析する。

現在、製造業の国内回帰も進んでいるものの、メーカーにとって「魅力的な価格」(高橋社長)を実現し続けるためには、工程ごとに専門業者が携わり、それぞれが収益を求める現在のやり方では限界があるという。

高橋社長は「得意分野がある町工場が1社にまとまり、そこから受注して利益を振り分けていった方が、価格競争力も出てきます。後継者不足も解消されます」と説明。“ものづくり連合”が必要との、独自の構想を持っている。

(2023年5月号掲載)