金属加工業による、金属加工業のための、ロボット導入サポート。カトウ(川崎市中原区上平間)は、ロボットのシステムインテグレーター(ロボットSIer)事業を立ち上げようとしている。あらゆる業種で深刻化する人手不足だが、中小製造業も例外ではない。これからは、どんな工場であろうとロボット化による生産効率アップが不可欠とされる。とはいえ、ロボットは量産品の生産には向くが、少量多品種では活用が難しいとされてきた。こうした中、同社はいち早く生産現場にロボットを導入し、少量多品種生産で検証。そして、その技術を構築し、今後は同業者向けに導入をサポートするロボットSIerに進化を遂げる。
マシニングセンタの多品種生産に活用
■アルミ溶接主体に機械加工も
1955(昭和30)年創業の老舗。金属加工業の中でも、熱影響を受けやすく寸法が出しにくい「アルミ溶接」を得意としてきた。板厚1~25ミリに対応。主に防衛関係や建設関係などから受注するが、精密板金・製缶だけでなく、マシニングやNC旋盤も導入。「機械加工業」としての顔も持つ。さらには設計やアセンブリー、リバースエンジニアリングもこなす。
3代目となる加藤欣吾社長が2014年に就任して以来、時代のニーズに合わせ業容を拡大。今、照準を合わせているのがロボットSIerの事業だ。
■新規参入決める
ロボットSIerとは、ロボットシステム導入の提案や設計を担う存在。県内ではロボット導入に対するニーズはあるものの、こうした人材が不足している。他業種からロボットSIerに参入する企業も珍しくはない。
とはいえ、加藤社長は「金属加工が分かっているロボットSIerは少ないと感じています」と指摘。「それなら、自分たちがロボットSIerになろうと思いました」と新規参入を決めた。
同社は年間1000種類もの部品を手掛ける多品種少量生産が主体。数年ほど前に、まず溶接ロボットと搬送ロボットを自社で導入。溶接ロボに対し、ワーク(加工対象物)のセットから加工後の搬送まで自動化する工程を確立させた。
そして現在進めているのが、金属を削ったり、穴を空けたりするマシニングセンタ(MC)作業でのロボット化だ。
■専用トレイを開発
具体的には、ワークをロボットでマシニングセンタに入れ、加工完了後に格納する一連の流れを自動化している。確かに、形状が同じ部品を連続加工する場合は、ロボットがワークを直接つかんで搬送することができるが、形状が異なる多品種の生産には難しいとされてきた。
そこで同社は、どんな形状のワークでも搬送できる専用トレイと、それを収納するストッカーを開発。これらのツールと制御システムなどを組み合わせることで、マシニングセンタで少量多品種生産時のロボット活用が可能になった。古いマシニングセンタでも後付けでロボット化できるのも特徴だ。
「人手不足が続く中、将来的にもロボットSIer分野は伸びると思っています。同じ金属加工業として、かゆいところに手が届く存在になりたいです」と、加藤社長は語っている。