グランツテクノワークス(東京都狛江市)は、プラスチック成形の常識を破るイニシャルレスの加工・通称「3-2-1-0加工(さん・に・いち・ぜろ・かこう)」を展開する。ポリエステルやアクリル、ポリカーボネートといった汎用樹脂の板加工などで金型レスを実現。試作から量産まで対応し、すでに現金自動預払機(ATM)や業務用端末の構造部品などに採用。金型製作にかかる時間が短縮できるため「圧倒的な納期スピードになります」(宮本鎮郎社長)と胸を張る。

圧倒的な短納期を実現

「3-2-1-0加工」は、顧客から3次元データを受け取り、同社で2次元の加工データに変換し、最短1日でイニシャルコスト0円で製作することに由来する。

プラスチック板などの材料に対し、独自改良を施した生産設備でスピード加工していく。板厚がミクロン台のフィルムから8ミリメートルまで対応した。

通常、プラスチック部品を試作・量産する場合は金型が必要になる。ただ、金型の設計から製作期間、製作コストを要する。

その点、「3-2-1-0加工」は、そもそも金型を使わないので納期短縮のみならず、同じ試作品であっても、いくつかのパターンが製作できるなど、数多くの相乗効果が出てくるという。

「材料をむだにせず、金型も作らないので環境負荷も減らせます」(宮本社長)と付け加える。

■町工場の新形態

2019年5月に設立した企業。「業界では新参者です。その新参者が他社と同じことをやっていても勝てるはずがありません。価格競争は疲弊するだけです。だから、ものづくりとビジネスモデルを根本から見直しました」と宮本社長。

長年業界に携わっていたが、さらに勉強や研究を重ね、同加工を編み出した。「誰でもやろうと思えばできるが、やれていないことにフォーカスしてビジネスをやれば儲(もう)かるという確信はありました」。全国を飛び回り、年間40回ほど展示会に出向いてトップセールスも繰り返した。

20年3月には小田急線・狛江駅近くのマンション1階のテナントに生産機能を兼ね備えた本社を移転。交通アクセスがよく人材が集まりやすい環境になった。「町工場の新形態です」としており、今後も業界を驚かせていきたいとしている。

(2023年11月号掲載)