「痛み」と向かい合って四半世紀以上─。医療機器製造、東京医研(東京都稲城市東長沼)は、赤外線治療器を製造販売する。中でも、近赤外線を照射することで患部の痛みを和らげる「近赤外線治療器」を主力としており、1989年の市場投入以来、国内外で累計約3万5000台を販売。ペインクリニックをはじめ、医療機関の各科で認められ、幅広く利用されている。腰痛や肩こり、神経痛...。人は年齢とともに、身体のあちこちに不調をきたし、慢性的な痛みに悩まされることがある。近赤外線治療器の普及は、QOL(クオリティオブライフ)の向上につながるとしており、超高齢化社会が到来した今、さらなるニーズ拡大を見込む。
「痛み」と戦い四半世紀
■生体の窓
近赤外線治療器「スーパーライザー」は、初号機の開発から30年以上。機能向上を重ねており、昨年は“第四世代”に当たる「スーパーライザーEX」(セット価格200万~300万円)を発売した。
近赤外線は目に見えない光だが、これを当てると人間の身体を構成する水分、血液(ヘモグロビン)、皮膚(メラニン)を通過し、患部に直接届く特徴がある。別名「生体の窓」とも呼ばれる。近赤外線で患部やその周辺が温まることで血流の流れがよくなり、痛みが緩和されていく。
最新機種「スーパーライザーEX」では、高効率なLED(発光ダイオード)光源と新波長体を採用。「(近赤外線が)身体に入る量は従来の5倍になりました」(奥啓之常務)と言うほど、進化を遂げた。オプションでさまざまなプローブを使うことで、より効果的に近赤外線を届けられる。
家庭用も販売する。安全性を考えて設計したコンパクトサイズで、スーパーライザーの機能を集約。痛みだけでなく美容目的など幅広い用途があり、レンタルもしている。「レンタルを続けていても最終的に購入する人が多いです」と、神田真寿生社長は語る。
■動物医療にも
現在、注力するのが近赤外線治療器の用途開拓。その一つが動物医療だ。すでに動物の痛みを和らげる専用のスーパーライザーも、医療機関用と家庭用で市場投入。このほか、動物用超音波手術器「ソノキュア」も販売。細かい振動(超音波)を使いながら手術をするもので、組織の破砕や乳化、吸引、骨の切削などの高度な手術が安全に行える。
さらに、近年では近赤外線を動物のがん治療にも使おうとする研究が進む。米国では、患部にがんの薬剤を注射し、そこに近赤外線を照射することで、薬が目的のがん細胞だけを破壊する最先端の研究が続けられており、日本でも自由診療で採用する動物病院もある。こうした動きは、同社にとって大きな追い風といえる。
スポーツの世界での普及も見込む。競技前に身体を温める必要があるアスリートが、ウォーミングアップ時に使用すれば効率化になる。すでに競走馬には採用されているという。
今後について神田社長は「“痛み”の市場は幅広く、皮膚科や眼科、歯科などにもさらに広げていきたいです。あとは海外です。中国や韓国、東南アジアのほか、人口が急増しているインドも開拓したいです」と、意気込みを見せている。