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“転倒リスク”見える化、予防つなげる

横浜国立大学発ベンチャー、UNTRACKED(アントラクト、横浜市保土ケ谷区常盤台)は、高齢者など、人が転倒するリスクの見える化に世界で初めて成功し、AI(人工知能)技術を活用した計測システムを開発。同システムの普及に乗り出した。

アントラクト、世界初のシステム実用化

「StA²BLE(ステイブル)」と名付けた同システムは、転倒リスクを「立位年齢」(商標登録済み)として算出し、わずか1分で知らせる。

同社によると、人が転倒する原因としては、筋力などの「身体機能」のほか、視覚や体性感覚といった「感覚機能」の衰えによるものとする。二つの機能が低下でバランスが保たれなくなり、転倒リスクが高まってくるという。

同システムは、身体バランスと感覚系を評価。過去の膨大な被験者データを照らし合わせ、立位年齢を示す。

これまでは身体機能を評価する仕組みはあったが、感覚系の計測方法は確立されていなかったという。

計測法としては「ライトタッチ現象」を応用。人は何かに指先で触れているだけで、安定して立つことができ、転倒しにくくなる現象とされるものだが、これをデバイスで再現した。

■デバイスで誘発し立位年齢

実際の計測は、対象者に指先デバイスを装着してもらい、目をつむったまま1分間立っているだけ。その間、デバイスを通じ、指先に振動を伝え「何かに触れている感覚」を与えたり、振動を急になくしたりすることを繰り返すことで、体のふらつきを誘発。最終的に立位年齢として割り出す。

高齢者施設でのリハビリのほか、現場の高齢化が進む建設業、製造業における転倒リスク把握と対策、スポーツ選手のパフォーマンス管理など、あらゆる活用を想定する。

価格は1システム50万~80万円、レンタル月5万円。厚生労働省の補助金も活用できる。

島圭介CEO(横浜国大大学院准教授)は「立位年齢は、その日の体調で変わってきます。日々計測することで、転倒事故の防止につながります」と話している。

(2022年7月号掲載)