大久保工芸(相模原市中央区上溝)は、イスラエル製の超大型3Dプリンター「マシビット」を使用し、卵型の特殊形状のベンチの筐体製作に成功した。繊維強化プラスチック(FRP)を使用した職人作業だと完成までに20日間かかるものが、28時間で終えられたという。「(3Dプリンターによる大型造形物の製作は)失敗するリスクもありましたが、あえて挑戦してみました」と大久保亘社長。今回の経験を生かせば、産業用で大型部品試作のスピード生産も可能という。
短時間を実証し産業用途も視野
同社は主にFRPや発泡スチロールなどを材料として、大型造形物を製作するのを得意とする。
今回製作したのは「クールホットベンチ」。中電工と神戸高専が共同開発し、伊福精密(神戸市)が造形設計を担当した。展示会会場などに置く卵型オブジェで、高さ1455ミリメートルもある。
筐体は外側と内側の二層構造になっており、二層間のすき間にはLEDチューブライトを通し、4色に発光する。
半導体素子を使って温度調整し、夏は涼しく冬は暖かくできる機能性を兼ね備えた。
■光の透過も
大久保社長によると、通常はこうした筐体にはFRPを用いるが、光を透過させるのが難しいという。
それに対し、同機では専用材料(紫外線硬化型のアクリル系樹脂)を使用したことで、筐体の透過性を実現した。
「3Dプリンターによる製作は、途中で失敗してしまったら高価な材料をむだにするリスクがあります。だから機械稼働中は誰かが目の前で見ていました」(大久保社長)。今回、同機での大型オブジェ製作が成功したことで、今後の展開にも弾みがついたとし、超短納期の案件に対し、同機の活用も提案できるとしている。
すでに産業用途などに引き合いが来ているとしており、まずは受注額ベースで年間1000万円を狙う。