2023年に開設400年を迎える旧東海道川崎宿。その街道沿いに創業して127年となる輸入ガラス商、岩田屋(川崎市川崎区本町)が、クラフトビールで地域を盛り上げようと奮起している。川崎ゆかりのデザインをふんだんに取り入れて設計した工場「東海道BEER川崎宿工場」は、カリスマ醸造技師のつくるビールが客を集める空間になっている。
旧川崎宿の名物ビールで地域活性化
岩澤克政社長は4代目で、生まれも育ちも生粋の川崎っ子。旧東海道川崎宿の開宿400年を目前に、地元である川崎宿跡のにぎわいを取り戻したいと、本業を生かした新事業を模索していた。
かつて松尾芭蕉がこの地で「麦の穂を たよりにつかむ 別れかな」と詠んだように、昔から川崎には麦畑があった。そんな川崎には麦酒(クラフトビール)がふさわしいと工場の新設を決め、18年12月に川崎駅東口近くにオープンさせた。醸造技師には、独特なセンスでファンも多い田上達史氏を迎えた。
川崎宿をイメージしたビール「1623」、県立川崎高校養蜂部の生産したはちみつを使用したビール「薄紅の口実」など、定番のものから季節ごとの限定ビールまで、約10種類が味わえる。「ジャパン・グレートビア・アワーズ2020」も受賞した。
また、1級建築士でもある岩澤社長自らがデザインした店内は、「日本空間デザイン賞2019」入賞も果たした。カウンター越しにはガラス張りのビール工場のタンクも見える。「ここ(カウンター)から、川崎の工場夜景を楽しんでもらいたいとデザインしました」と、岩澤社長。
平日は地方からの出張ビジネスマン、週末には千葉、埼玉などからも客が足を運ぶ。コロナ禍で飲食店の時短営業が続く中、ECサイトでのビール販売も好調だという。