医療システムベンチャー、テレメディカ(横浜市青葉区つつじが丘)は、医療関係者にとって欠かせないスキルである「聴診」と「触診」を、オンラインながらもリアルに近い音でトレーニングできるシステムを開発、国内外で注目されている。専用スピーカーをパソコンに接続。画面に表示された人体イラストに聴診器を当てる操作をすると、正常な心音はもちろん、200~300種類以上の症例音が聴ける。自宅にいながらにして「脈を取りながら聴診をする」という訓練を可能にする。
テレメディカ、医療教育システムが国内外で脚光
コロナ禍で対面授業が制限される医療教育現場で急速に普及する。
同システムは、オンライン聴診教育ツール「iPax(アイパクス)」と専用スピーカーの「聴くゾウ」で構成。いずれも日米で特許を取得済みだ。
画面上には仮想患者の前胸部と背面部が映し出される。聴診器で聴きたい部位に当てると、「心音」と「肺音」が聴ける。音は聴診器を当てる場所ごとに変わる。専用スピーカーは振動タイプで、脈機能をオンにすると、脈拍も取ることができる。
システムの“肝”となるのは、その再現性。外部ノイズや機器の駆動音が混ざらず、生体とほとんど同じ音質で聴診音のみが聴ける。
周波数やスピーカー構造…。たくさんのノウハウを詰めた。開発には大手電機メーカーも協力した。
「専門家からは『まるで(スピーカーの中に)心臓が入っているようだ』との感想をもらいます。専門家であればあるほど評価が高いです」と藤木清志社長は語る。
■新型コロナの肺音も
現在、あらゆる病気の症例音を公開。新型コロナウイルス患者の肺音も追加した。学生たちは自宅にいながら実習に近いトレーニングができる。
同社によると、従来、学生が聴診を訓練する際はマネキン型のシミュレーターを使用していた。中には、高額で再現性がよくないものもある。藤木社長は「それが本物の音だと思ってトレーニングしていると、やがて本物を聴診したときに、音が聴き取れず困るケースがあります」と指摘する。
その点、同システムは看護学校向けでも年間5万5000円(年額サブスクリプション方式)から利用可能だ。スマートフォンやタブレットでも使える。
■将来はIPOも視野
すでに全国の医科系大学の約7割が「聴くゾウ」を授業に導入。今後は看護学校や医療系の専門学校にも売り込む。
海外展開にも着手。藤木社長の試算によると、同システムの市場規模はグローバルで1800億円(日本は70億円)。この中でシェアを拡大し、5年後には売上高11億円を計画する。
「社会的にも価値のある事業だと思っています。将来的には遠隔医療にも活用できれば」と話しており、IPO(株式新規公開)も目指している。