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精密板金技術で「マスク保管箱」

精密板金の野口製作所(綾瀬市深谷南)は、ウィズコロナ時代で欠かせないマスクを保管するため、抗菌・抗ウイルス性がある“箱”を開発した。抗菌性などがある銅や真鍮に着目し、0.8ミリの薄板を得意の精密板金技術で、すき間がない箱に仕上げた。「Ori(折り)」シリーズというブランド名で販売していく。1964年10月の創業以来、初めてとなる一般向け製品だ。

薄板ですき間なく加工

市内の中小企業4社で構成される「あやせものづくり研究会」に参加する同社が、有名プロダクトデザイナーと組んで完成させた。

「日常でマスクは欠かせませんが、(自宅や職場で)マスクを保管しておく場所に困っているはずです」(野口裕社長)と、抗菌・抗ウイルス性のある銅と真鍮に着目。これらの素材に対し、同社が得意とする板金技術を生かした保管箱ができないかと、昨年6月から試作を繰り返してきたという。

同シリーズは、マスクを安全に保管する箱(銅製・真鍮製・ステンレス製)3種類と、マスククリップ(銅製・真鍮製)2種類をラインアップ。保管箱は不織布マスク30枚程度が収納できる。

いずれも薄板に対し、溶接をせず、すき間ない箱にした。また、弾性などの特性を計算、素材ごとに寸法や曲げの角度を0.1ミリ単位で調整したという。

シンプルなデザインが特徴。素材そのものが持つ色合いを生かし、色の経年変化も楽しんでもらおうと、塗装を一切していない。「使えば使うほど“味”がある色に変わっていきます」(野口社長)と話している。

価格は銅製の保管箱が1万7600円、真鍮製1万4300円、ステンレス製(銅プレート入り)1万1000円となっている。同研究会のホームページなどで直販していく。野口社長は「(コロナ対策の)意識が高い人たちに使ってほしいと思っています。医療機関での活用も想定しています」としており、初年度はシリーズ累計100個の販売を見込んでいる。

■塗装事業にも参入

同社は通信機器の筐体部品から工作機械のカバー類、医療機器部品などの精密板金を手掛ける企業。加工から組み立てまでをワンストップで手掛けるが、紛体塗装ロボットも導入し、今年2月から塗装事業にも参入した。「塗装を内製化することで『ノグチ品質』の安定化につなげます」(野口社長)としており、本業でも販路拡大を狙う。

(2021年7月号掲載)