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畑を「見える化」、農家の負担を軽減

農業用資材卸売業の京浜興農(逗子市逗子)は、特殊なカメラが搭載されたドローンを飛ばし、畑を上空からセンシングすることで、農作物の生育状態を診断する新事業を始めた。上空から得られた画像データから、害虫が発生していたり、肥料が足りなかったりするエリアを特定。畑の状態を“見える化”する。ドローンによる農薬散布と組み合わせることで、農家の大幅な負担軽減が期待できるという。

特殊カメラ搭載ドローンで新事業

マルチスペクトルカメラを搭載したドローンを使用。被写体(農作物)が放出する光のスペクトル情報を上空から観測する。そうした情報から農作物の生育状態を示す指標「NDVI値」(正規化植生指数)のマップを作成する。

これにより、広大な畑でも、それぞれの農作物の生育状態が一目で分かるようになり、従来のような見回りながらの確認作業が軽減できるという。

さらに、そうしたデータをドローンでの農薬散布に活用することで、畑全体に散布しなくても、必要なエリアへの「スポット散布」が可能になる。

羽隅弘治会長は「従来、農業分野でのドローンの活用といえば、田んぼが主体でした。畑の場合だと、同じエリアで育てる作物が違ったり、住宅に囲まれていたりするため難しかったからです」と説明した。

同社によれば、1ヘクタール当たり3~4時間を要していた農薬散布が、ドローンの活用により1時間程度(準備時間含む)で終えられるという。農家にとって肉体的な負担が減るだけでなく、農薬使用量の削減にもつながる。

すでに伊勢原市内の農家の協力を得て実証を重ねており、今年度から本格的な事業化を進めていく。

■農業ソリューション

同社は戦後間もなく焼け野原が残る中、再建のために「食」で貢献していきたいと1949年4月に設立された老舗企業。現在は農薬や農業資材、種苗など、幅広い商材を扱う。

農業は県内でも盛んだが、三浦半島や県央、湘南、県西、横浜など、地域によって主力の農作物は異なる。同社ではJAと連携しながら、各地域を網羅し、それぞれの農家に対しソリューション提案をしている。

今回の新事業でも、ドローンで見える化した畑の課題に対し、解決につながる商材を提案していく。「農作物のことを理解し、対策も知っている当社だからできる事業です」(羽隅会長)と話している。

(2023年11月号掲載)