金属加工業の若き3代目が自社商品のヒットを目指し、挑戦を重ねている。精密板金加工、タシロ(平塚市入野)は、コロナ禍で多角化を模索するため、設備と技術を生かしたBtoCのモノづくりを始めた。開発頻度は3カ月に1製品。資金調達でクラウドファンディングにも挑戦。5年後には自社の売上比率を3割まで持っていきたいとの目標を掲げている。
タシロ、若き3代目が「メーカー」に挑戦
“製造業のコンビニ”を標ぼうする同社は創業56年目、社員12人。国内第1号の最新鋭ファイバーレーザー設備を備え「即日見積・24時間以内納品可能」という生産体制を持つ。
3代目の田城功揮取締役は人材紹介会社勤務を経て、3年前に家業である同社に入社。以来、社員の定着に向けた取り組みを重ねている。日頃手掛ける部品は、目に見えないところに使われるため、従業員にとっては「自分の仕事がどんなふうに役に立っているのかまでは分からない」(田城取締役)ことが、離職率の高さにつながっていたという。
コロナ禍で本業の売り上げが落ち込む中、受注加工型だった業態からBtoC製品の製造へ、新事業の展開を決意した。自分たちに何ができるか、世の中で必要とされていることはどんなことか、試行錯誤を重ねた。
■国際見本市でグランプリ
最初の商品は、非接触が叫ばれる中での「タッチレスハンド」。直接触れることなく、アタッチメントで触れるだけでATMなどのタッチパネルが操作できる。
ほかにも、夏には金属製ペット用冷却シート、記念の文言や名前をレーザー加工で刻んだ「金属製コースター」などを次々と開発した。
資金調達と市場調査も兼ねて、クラウドファンディングにも挑戦し、目標を達成した。このほど、国内最大級の生活雑貨国際見本市「東京インターナショナル・ギフト・ショー」では、「3WAYピザ窯」がLIFE×DESIGNグランプリも受賞している。
そうした中で、社員のモチベーションにも変化があったという。
「20年勤めてきた社員が、子どもに『お父さんの会社がつくったんだよ』と自慢できたと喜んでくれました。厳しい声もありますが、勉強にもなります。町工場から、ヒット商品を生み出したいです」(田城取締役)と挑戦を続けている。