特殊ベアリング製造、日本軸受加工(横浜市港北区新羽町)には、いくつものオンリーワンがある。「機械産業のコメ」と呼ばれるベアリング(軸受)は、摩擦を減らし軽い力で機械の軸を滑らかに回転させるための部品。あらゆる機械製品などに利用されている。同社が得意とするのは、ベアリングの「追加工」と呼ばれる分野。大手企業が量産する標準品を、最終ユーザーが求める仕様に応じて加工するものだ。さらに、追加工技術を生かし、オーダーメードによる特殊ベアリングも製造販売する。「超精密の加工技術でベアリングを1個から生産する企業は、おそらく日本で唯一だと思います」と、伊藤篤史専務は胸を張る。
「追加工技術」磨き半世紀
■1個からカスタマイズ
自動車や家電から産業機械、ロボット、航空宇宙、医療...。回転する動きを必要とするものにベアリングは欠かせない存在。自動車には100~150個使用されているという。用途が限りないだけに、市場に出回るベアリングの種類は膨大。約5万種ともいわれる。
ただ、メーカーの標準品だけでは難しい、特殊な環境下での使用を求められるベアリングに対するニーズもある。航空・宇宙や海洋・資源開発、製鉄などの分野だ。品質要求レベルも高い。
とはいえ、量産品が主体の大手メーカーにとって、ベアリングを一個一個カスタマイズしていたら、それこそ採算が合わない。引き受けたとしても時間がかかることは明白だ。そこでニーズがあるのが同社の追加工や特殊ベアリング製造技術だ。
■「加工指定工場」に
追加工は、メーカーのベアリングに対し、隙間を広げたり、穴を開けたりして、「ユーザーが求める仕様」に改良する。無論、メーカーのベアリングの性質を知り尽くしていないとできない。
同社の追加工技術は大手メーカーが“お墨付き”を与える。日本精工(NSKブランド)製ベアリングでは、同社が追加工した場合、その品質保証はメーカーが担うという「加工指定工場」にもなっている。
一方、特殊ベアリングの製造販売も事業の柱。オリジナルブランド「NJK」として年間200アイテムほどを展開する。守備範囲は広く、コインサイズから外径1250ミリメートルの超大型ベアリングまで、1個生産から対応している。
具体的には、医療検査機器用「ギア一体型ステンレス軸受」や、半導体製造装置の「薄肉ステンレス軸受」、海底資源掘削用「特殊銅鋼・球面ブッシュ」など、多種多様だ。
■アナログとデジタル
工場内は「少量多品種生産に特化している生産体制」(伊藤専務)としており、アナログとデジタルが共存。最新NC工作機械とともに、小回りが利く、はん用の旋盤・フライス盤が所狭しと並べられており、若い技術者たちが操作する姿も目にする。
創業から約半世紀。今では取引先300社を擁し、特殊ベアリング製造では、なくてはならない存在になっている。
ニッチながらも大手が参入しないオンリーワン技術とビジネスモデルを構築したことで、価格競争にも巻き込まれず、コロナ禍にあっても昨年度は過去最高の売上高をマークした。
「ベアリングは長い歴史があり、これからもなくならない部品」と語る。今後は半導体製造装置や医療機器関連などに期待し、さらなる受注拡大を見込む。