新羽金属工業(横浜市港北区新羽町)は、品質重視ながらも最短で当日仕上げとする“超短納期”の熱処理加工を実現する。小さいものでコンマ1ミリ単位、大きいものは数メートルまで対応。「早いだけならどこでもできます。品質重視の短納期が強みです」と奥谷将之社長。生産スケジュールの変更や急な指定日納品で短納期を余儀なくされる企業からの依頼が多いという。その一方で、熱処理にとどまらず、ものづくりを丸ごと請け負う「総合加工サービス」も展開しており、地域の製造業を下支えする。
総合加工サービスにも進出
■4種の設備を使い分け
熱処理は金属の硬さや強度、靭性(=ねばり)を持たせるために不可欠な工程。自動車や建設機械、航空機、工作機械...。あらゆる工業領域で必要とされ“鋼に命を吹き込む製造業“とも言われる。
同社は、工作機械のスピンドルや自動車生産時の検査治具などを幅広く手掛けており、求められる硬度や材質などに応じ、4種類の設備を使い分けている。
形状や寸法、硬さにもよるが「高周波焼き入れ」か「ソルト焼き入れ」は午前10時までの持ち込みなら、最短で当日の午後4時に仕上がる。「真空焼き入れ」と「真空浸炭焼き入れ」なら、午後3時までの持ち込みで翌日の午前9時の引き渡しも可能だ。
技術者11人で、月当たり短納期案件を含め平均約3000件をこなす驚異的な生産性も実現する。
■ささいなことでも相談
一般的に、金属部品などの設計図面では、形状や寸法、硬度などの数字の記載はあっても、熱処理の指定までは書かれていない。
そのため、図面の要件を満たし、短納期を実現するには、どの方法で熱処理するか。加工対象の状態や図面指示されている内容から、同社が判断していく。「図面を理解する力と社員一人一人のスピード感が必要不可欠です」と奥谷社長は語る。
たとえ営業であっても、手にした図面を見て的確に現場に情報展開できれば、段取りもスムーズにいく。それを実現するため、社内では、ほぼ全社員が会社携帯を身に付け、分からないことがあれば即社内に確認。取引先からのささいな相談や質問も直通電話で応答。素早く判断し、対応ができる体制を構築している。
■VA提案も可能に
一方、これまで培ってきた製造業ネットワークを生かし、協力工場約300社を巻き込んだ「総合加工サービス」も展開する。これは、材料調達から機械加工、熱処理、研磨加工、表面処理、検査まで、ものづくりのほとんどの工程を、同社がワンストップで受けるサービスだ。
発注企業がこれまで複数の専門業者に出していたのを、同社が丸ごと請け負うことで責任や保障を一本化する。発注企業は手間が減らせるだけでなく、短納期にもつながる。
「納期が早ければ早いほど、お客さんは助かります。ただ、それには技術と知識、スピード感が必要です。この蓄積があるからこそ短納期だけでなくVA提案(品質を維持したままコストダウンする提案)や一貫生産もできます」と、奥谷社長。
1973年の会社設立から約半世紀。ワンストップソリューション企業への進化を遂げようとしている。