注射器に革命起こす─。医療機器ベンチャー、アットドウス(横浜市旭区鶴ケ峰)は、針先がぶれずにワンプッシュで投与できる新タイプの注射器を開発、年内に量産を始める。患部に針を刺してから側面ボタンを押すだけで、決まった量の薬液が投与できる。注射器の扱いは、医師や看護師でも“熟練の技”が必要とされてきたが、新タイプに置き換わることで、より安全で正確な投与が可能になるという。
医療従事者のストレス軽減
一般的な注射器は、針を刺してからプランジャー(押子)を押すため、指や手の持ち替えが必要になる。ただ、持ち替え時に針の位置がぶれてしまい、内出血や薬剤漏れを起こしてしまうリスクがある。
そのため、眼科治療における網膜注射など、極めて小さな患部に注射する際、熟練した医師たちは、持ち方を工夫したり、両手を使って注意深く持ち替えたりして、針の先端がぶれないように工夫している。
■従来より半分の時間
今回、開発した新タイプの注射器「atSyringe(アットシリンジ)」は、持ち手を替える必要がなく「刺してからボタンを押す」といった動作のみで薬液を体内に投与できる。0・1cc以下の薬液に対応した。
特許取得済みの「側面押下型」の方式により、注射器本体にある側面のボタンを押すだけで注入される。医療現場においては治療時間の短縮や医療従事者のストレス軽減などにもつながるという。「従来よりも約半分の時間で投与できます」と、中村秀剛社長は話している。
針先がぶれたり、薬液が漏れたりするリスクがないため、網膜投与のほか、内耳投与や小児集中治療室(PICU)、動物実験、高価な注射剤などでの応用を期待。初年度は1万個の生産を計画している。「今後、学会などでニーズを探っていきます」(中村社長)としており、用途開拓を進めていく。