金属加工・樹脂加工・その他加工

段ボール製造の必需品「抜き型」、鋭い切れ味を誇る技術

仕事や生活に欠かせない段ボール箱の製造には「抜き型」が使われる。全国に400社近いメーカーの中で、田村工機(川崎市高津区下作延)の抜き型は、切れ味の鋭さで、段ボールメーカーの評価も高い。特に難しい連続切断用のロータリータイプを加工できるのは、同社をはじめ計10社に満たない。段ボールメーカーの大手・準大手から仕事が集まってくる隠れた優良企業だ。

難しいロータリータイプも

段ボールの抜き型は、木のベースに長い金属製の刃を曲げて埋め込んだもの。段ボールシートに押し当てて切断し、切れ目と折り目を入れて折り曲げ、接着して段ボール箱に組み上げる。切断後に、段ボールが抜き型からスムーズに離れるよう、ゴムの反発材などを配置するのもノウハウだ。

1969年設立の老舗

上場企業クラスの大手段ボールメーカーでは大量生産するため、抜き型を上下動でなく、回転させて連続切断する。このロータリータイプの抜き型は、刃物を回転の3次元方向にも曲げて埋め込む必要があり、高度なノウハウと経験が必要になる。

同社は1969年設立で、社員58人。東北と九州にも、関連会社とそれぞれの工場を持つ。創業者の娘婿である佐藤五郎氏が、経営改革を進め、2014年に社長に就任。安定した利益体質を構築している。

経営改革で安定した利益体質

新規分野として段ボール製品の企画・設計・デザイン業務を開始。サッカーJリーグ・川崎フロンターレのイベントで、段ボールのスポーツカーなどを手掛けた。

また、段ボール箱の中の製品を固定する緩衝材を発泡スチロールから段ボールに代替する動きにも、設計機能を強化することで対応。「社員のモチベーションアップにつながっています」(佐藤社長)

川崎市が持続可能な開発目標(SDGs)に取り組む企業を認定・支援する「かわさきSDGsゴールドパートナー」の認証も受けた。目標として掲げた女性の活躍を推進する取り組みが成果を挙げ、製造現場でも女性スタッフが増えている。

(2024年9月号掲載)