生ハムの製造から半導体分野での試作開発、最先端のMEMS(微小電気機械システム)、再生医療用の細胞培養、牛の搾乳機…。協同インターナショナル(川崎市宮前区宮崎)の事業領域は実に幅広い。貿易商として出発した創業以来から多角化戦略を続けており、今ではグループ全体で売上高約70億円にまで成長。商社でありメーカーでもあり、業種にもこだわらない同社を、池田謙伸社長は「課題解決業」と言う。景気の波に強いとされる多角化戦略だが、同社は既存の価値観に縛られないビジネス展開で独自路線を歩む。
協同インター、生ハム製造から半導体事業まで展開
■探り続ける商売のタネ
同社の事業は「電子MEMS」「IoT」「ライフサイエンス」「食品・食材」「畜産・酪農」「環境」など多岐にわたる。
電子事業では、半導体の超微細加工を受託しており、中でもスパッタリング(成膜)とフォトリソグラフィー(露光)の技術を強みにする。MEMSでも、フィルムやプラスチックなどにナノレベルの超微細加工を施す特殊技術「ナノインプリント」を展開する。
一方、食品事業では、生ハムを中心に輸入するほか、飲食店や専門店に卸す。グループ企業では生ハム・生ベーコンを製造する。
創業は1970年。先代が貿易商として始めた。インテリア用に米国の廃車から回収したナンバープレートや、台湾産のスッポン、欧州の農業用機械など、「世の中にないもの」なら何でも輸入する企業だったという。その姿勢は今も変わらない。
2代目の池田社長も「私の仕事は新規事業開拓です。みんながやらないことを考えるのが社長の仕事です」と語り、常に商売の新しいタネを探し回る。
■社長トップの企画開発室
多角化の実践に当たり、社内には「企画開発室」を置く。そこで、社員から出たアイデアで、事業化できそうなものを精査していく。発案した社員は、既存部署と兼務することもある。
社長が「企画開発室長」でもあるので、意思決定までのスピードが早い。かつて大手電機メーカーに在籍し、海外で社内ベンチャーの立ち上げに携わった経験がある池田社長。海外ベンチャーとも関わった。その時に日本企業とのスピード感の違いを痛感したという。その教訓を生かした。
新規事業で欠かせないのが「今までなかったモノ」「まねされないモノ」「自分で価値が付けられるモノ」という要素。
実際、同社の製品群や技術は、どれもニッチといえるが、トップシェアを目指せる地位にある。「誰もやっていないからこそ値段がつけられるのです」(池田社長)。
できるだけリスクは負わない。最初から設備投資をするのではなく、まずは他社との協業の道を探ったり、工場も所有せずに借りたりして、初期投資をできるだけ抑える。「いつでも撤退・縮小できるように準備しながら進めます」(同)。
異業種の事業が重なると、相乗効果も生まれるという。例えば、試作品開発などで厳しい納期管理とムダのないスケジューリングが要求される電子事業部門のノウハウを、生ハム製造にも応用。また、同部門で培ってきた加工技術を食品のパッケージ製造に使うなど、各部門の知恵を持ち合うことで、新しいやり方を生み出す。
コロナ禍で多くの企業が影響を受けた。その点、同社は創業以来の多角化戦略が奏功し、成長を続ける。池田社長は「今後も新事業ハンターとして挑み続けます」と、語っている。