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最大128軸のサーボモータをソフトウェアで同時制御

米マサチューセッツ工科大学(MIT)発祥のソフトウェア開発企業、モベンシス(東京都新宿区)が開発したモーション制御プラットフォーム「WMX」が注目されている。専用ハードウェアを必要とせず、ソフトウェアのみでサーボモータの高精度制御を可能にする革新的な技術とされる。Soft Motion(ソフトモーション)と呼ばれるこの技術は、市販のWindowsパソコン1台で最大128軸のモータを高精度に同期制御でき、装置の省スペース化とコストダウンを実現する。すでに国内外で年間8000ライセンス近くを販売しており、ロボット特区を擁する神奈川県内での展開も本格化させていく。

モーションコントロールをPCで

WMXは、従来モーションコントローラやPLCといった専用機器で行っていた制御を、汎用パソコンとソフトウェアで代替する「PC制御・ソフト制御」技術の集大成とされる。

同製品は、Windowsパソコンにインストールするだけで、そのパソコンがモーションコントローラとして機能。最大128軸を高速かつ高精度にリアルタイム制御できる。世界各国で40件以上の特許も取得している。

さらに、オープンな産業用ネットワーク規格である「EtherCAT」や「CC-LinkIE TSN」など計4つのネットワークプロトコルに対応し、自由に切り替えができる。これにより、特定の環境に依存することなく、既存システムとの統合が容易になるという。

同製品の導入により、従来の専用モーションコントローラなどが不要になることから、現在、全世界で年間5000〜7000ライセンスを販売。昨年は8000ライセンス近くを販売し過去最高を記録した。

「ほとんどの半導体製造装置に採用されています」と、本間広光・日本法人副社長兼技術営業部長は語る。

価格は1ライセンス10万円から。サーボモータに対するモーション制御市場は、半導体製造装置や電子部品製造装置などを中心に急拡大しており、今後はロボットや自動化装置などを手掛ける中小企業などにも提案していく。

モベンシスは、京都大学工学部卒業後、MITで「次世代ロボットコントローラ」の研究に従事していた梁富好(ヤン・ブホ)社長らによって設立された米国法人から発展。「絶え間なき技術革新により社会の変革に貢献する」を経営理念に掲げ、2004年から活動拠点を日本に移し、14年に世界初となるソフトモーション技術を活用したソフトウェアベースのモーションコントローラ「WMX」を発表した。

23年には技術に着目した三菱電機とも業務・資本提携した。現在は日韓のほか、米ボストンに研究所、中国・上海にも営業拠点を持っており、グループ従業員100人近くを擁している。

(2025年9月掲載、取材協力=韓国・素部装技術融合フォーラム)