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日本製スイッチにこだわり半世紀

スイッチ一筋半世紀─。シンデン(横浜市港北区新吉田東)が製造販売するスイッチは実に2万種類以上。電気製品や自動車、医療機器...。日常生活で頻繁に使うものにも、同社製スイッチが数多く採用されている。1970年2月の創業以来、安心の日本製にこだわりながらも、独自の設計を施すことでコスト競争力を実現。数年前には、スリップリング(回転コネクター)を開発するなど、新たな挑戦も始めている。

2万種超を生産しコスト競争力も

■コスパ抜群のスリップリング

膨大な種類の標準品のみならず、カスタムやセミカスタム品も扱う。例えば、カスタム品では誰もが知る自動車の室内灯のスイッチや、パチンコ用スイッチなどにも広く採用されている。

現在、販売に注力するのがスリップリング。スリップリングとは、回転する物に電力や電気信号を伝える回転式のコネクターを指す。同社製品の特徴は、1個2000円という価格でありながら、1分間300回転の高速回転に対応し、チャタリング(振動による不具合)も一切ない。耐久性は最大1000万回転ある。1アンペアの定格電流で8回路を有しており、宮上達社長は「この価格でここまでの性能がある製品はないと思います」と胸を張る。

“回転するものに絶えず電気を送り続ける”という同製品の需要は、あらゆる分野で見込めるとしており、すでにアミューズ関係(パチンコ台)の演出照明部品として累計20万個を販売した。今後は360度動く回転型の監視カメラやペット追跡カメラなどの用途も見込んでいる。

■安心して調達

現在、最終製品となる大手電機メーカーなどのほとんどが海外生産を主力とする。リーマンショック以降の超円高で、その傾向は加速した。そうした反省から、国は国内回帰を後押しし、今では呼応する大手企業も出ている。

だが、同社は昔から国内生産にこだわり続ける。その理由として宮上社長は「安心してものづくりができるからです」ときっぱり。

スイッチはいわば精密部品。長期にわたり、オンオフを繰り返しても壊れないような品質が問われる。そして、その部品となるプレス品の多くが板厚0・8ミリのものを使用する。コンマ1ミリレベルを要求される世界においては、わずかな誤差は不良品を意味する。

その点、国内生産品を調達すれば、正確な寸法のため、スイッチの構成部品として安心して使えるという。それに対し、海外生産の現地調達品は、品質のバラツキが避けられない。

「国内だと安心して調達でき、質の高いものづくりが自然とできます」

■全国の内職者も活用

他社製の同型の国内生産品と比べ、圧倒的な価格競争力も強み。

理由の一つとして宮上社長は「肝は設計にあります。誰でも組み立てできるように設計しています」と説明。その証拠に、量産品の場合、全国の協力工場とともに内職者を活用しているという。さらに、多品種のスイッチ製品ながらも、使用部品の標準化も進めている。

高品質とコスト競争力を両立させることは、どの製造業にとっても至難の業。だが、同社は国内生産を続け、安価な海外生産品とも競争してきた経験があるからこそ、両立を実現できたといえる。

(2023年5月号掲載)