北里大学発ベンチャーのPhysiologas Technologies(フィジオロガステクノロジーズ、相模原市南区北里)が、日本初となる、在宅透析が可能な小型装置の開発に着手した。患者自身が自宅で透析できるようになることで、体への負担が大幅に減り、生活も変わるという。2022年にプロトタイプを開発し、25年の製品化を目指す。「一日も早く装置を世に出し、患者のQOL(生活の質)向上に貢献していきたいです」と、小久保謙一取締役は語っている。
フィジオロガス テクノロジーズ
透析患者は毎年4万人近く増えているとされるが、患者にとって治療の負担は大きい。専門施設に週に3回通い、数時間の透析治療を受ける必要がある。そのため、働く世代では仕事との両立が難しいとされる。
在宅治療を希望する声も多いが、技師や看護師が扱う複雑な装置を患者本人が使うには、訓練に約半年間かかるという。
また、装置を自宅に置くにも広いスペースが必要になる上、1回の治療で水道水120㍑を使うので、排水を処理する水道配管の工事が不可欠。そのため、全国に約34万人とされる透析患者のうち、在宅透析は700人ほどにとどまるという。
現在、開発を進める装置は小型化に加えて、透析液を再利用できる仕組みも構築することで、課題の一つである水道配管工事を不要にするという。特別な訓練がなくても使えるよう、操作性にもこだわる。
「働いて帰ってきた1日の終わりや移動先で透析ができれば、仕事と治療を両立させ、以前と変わらない生活ができるようになります」(小久保取締役)。
専門施設にとってもメリットは大きいという。限られた面積と設備、人員では対応できる患者数に限界がある。コロナ禍でオンライン診療の普及が進んだものの、透析治療は専門施設に通院するしかなかった。
しかし、在宅透析が普及すれば、通院する透析患者にとっては選択肢が増え、新しい形の医療提供にもつながるという。
開発にかかる資金1億4000万は調達済み。技術シーズの社会実装化助成金「はまぎん財団Frontiers」にも採択されている。