寒い冬には肉まんと缶コーヒー、アウトドアなら缶詰とレトルトパックのご飯。赤ちゃんには人肌に温まったミルク...。中に入れるだけであらゆるものを温められる保温バッグ「WILLCOOK(ウィルクック)」をWILLTEX(ウィルテックス、横浜市中区山下町)が開発した。専用バッテリーを接続し、電源を入れると5分で80度に到達。レトルトカレーなら約20分で55度まで温まる。まるで“持ち運べる電子レンジ”だ。
海外でも特許取得
同製品の保温技術には「HOTOPIA(ホットピア)」と呼ばれる、布製ヒーターの特許技術を活用した。三機コンシス(東京都江戸川区)が開発したもので、独自の方法でニット状に編み込んだ導電繊維を発熱させ、素早く均一に温める。伸縮電線を使っていることから、軽量で柔軟性もある。すでに日本や中国、韓国、台湾、米国、EU諸国で特許取得済みだ。
ウィルクックはこのホットピアに加え、保温効果の高い断熱中綿と、遮熱効果の高いアルミフィルムを含む5層構造。これにより、極めて高い保温力を実現した。
専用アプリをスマートフォンにインストールすれば、設定温度も自由に変更可能だ。
開発のきっかけは、木村浩社長の阪神淡路大震災の被災経験。ガスや水道が止まる状況が約1カ月間続いた。
災害支援の人たちの優しさに触れて元気が出たが、炊き出しの温かいみそ汁を口に入れた瞬間、あちこちで涙を流す人がいたという。
木村社長は「心が疲れている中、温かいものを口にする幸せと、人としての尊厳を感じました」と振り返る。
繊維業界に30年以上携わった知識と経験をもとに2018年7月に同社を設立。ウィルクックは、日常時にも非常時にも役に立つモノやサービスを表彰する「フェイズフリーアワード2022」で、オーディエンス賞を受賞し ている。
現在、ウィルクックを使ったレシピ開発や企業とのコラボなど用途開拓を進める。
「ホットピアは日本発の繊維技術。可能性は無限大です」と、木村社長。今後は、今までにない「温めるもの」を製品化していきたいとしている。