ACR(愛川町中津)は、クルマに後付けできる自動ブレーキ(衝突被害軽減)システムを開発した。対歩行者・対車両に対応。ペダルの踏み間違いによる急加速も防ぐ。高齢者ドライバーによる事故が多発していることを受け製品化に踏み切った。同社によると“後付け”ができる自動ブレーキシステムは世界初という。今後は国内に6000万台以上あるとされる既販車に対し搭載を提案。既販車の自動ブレーキ市場の創出を目指す。
ACR、高齢者ドライバー事故防止で新兵器
国は11月から新車(国産車)、25年12月からは生産継続車を対象に、自動ブレーキの搭載を義務化する。
ただ、大手自動車メーカー各社は、新車の約8割に自動ブレーキなどの安全機能を標準搭載しているものの、既販車は手つかずのまま。同社によると、現在、街を走っている既販車の過半数は自動ブレーキ化されていないのが実態という。
同システムは、国土交通省が定める「衝突被害軽減ブレーキに関する保安基準」などに準拠し開発した。ミリ波レーダーと単眼カメラが一体化された「前方監視装置」のほか、「電動アクチュエータ」や「制御装置」などの計5点セットで構成される。
走行中に単眼カメラが車両や歩行者を検知するとともに、ミリ波レーダーで対象物との距離を認識。走行中のクルマと対象物の速度から、制御装置が危険性を判断。衝突リスクがあれば、まずブザーで警告する。それでも減速されなかった場合は、電動アクチュエータがブレーキのペダルレバーを強制的に押し下げる。
自動ブレーキの作動速度域時速は60キロ、危険を知らせる警告は同80キロまで。
一方、クルマの後退時は加速度計により、過大な加速度があった場合にブレーキを強制的に作動させる。
3年ほど前から開発に着手。運転環境やドライバーのくせが違っても、誤動作・誤作動がないよう、数え切れないほど検証、改良を重ねていったという。夜間や霧が深い場所など、環境によって検知は難しいケースもあるとするが、「高齢者が普段、運転するシーンなら何の問題もありません」(松岡寛社長)と話している。
価格は16万円(標準工賃込、税別)。トヨタ、ホンダ、日産、ダイハツ、スズキなどの軽自動車から乗用車まで計35の型式に対応。半年後には70型式に増やす。全国の整備工場などと組み、高齢者ドライバーをターゲットに販売していく。
松岡社長は「普及させることで、より多くの交通事故をなくしていきたいです」と語っている。