たかがねじ、されどねじ―。締結部品を製造販売するサイマコーポレーション(藤沢市辻堂)は、いわゆる“御用聞き営業”は一切しない。下請け体質が残る中小製造業にあって、受注生産には力を入れず、オリジナル製品を次々と開発。ねじ製品のブランド化に成功している。国内市場が縮小するねじ業界だが、その中でも開発や知財戦略にテコ入れ。中小製造業が今後、国内で生き残る道を示す。

女性比率は5割 独自のブランド戦略

■フレックスな勤務形態

藤沢の本社に勤務する従業員は22人。そのうち半分以上を女性が占める。海外営業や品質管理など、さまざまな部門で活躍。中には、2カ国語、3カ国語を話せる人もいる。

ただでさえ、人集めに苦慮する企業が少なくない。それでも集まるのは、フレックスな勤務時間を導入している点が大きい。同社の場合、女性従業員は子育て中の人が多く、勤務日や勤務時間は働き手の都合で決められるように設定している。たとえ勤務時間中であっても、事情により1~2時間外出することも可能だ。

「人を集めようとしたら、本人の都合に会社が合わせないと難しいです。どこの会社も勤務形態をフレキシブルにしたら、人が集まり、定着もすると思います」と斎間孝社長。実際、同社では退職者ほぼゼロを実現している。

■売るための工夫

販売するねじは、およそ2000種類。ほとんどが標準品で、特注品はめったにやらない。オリジナルブランドとしては、いたずら防止ねじ「TRF ®」、頭部が低いねじ「スリムヘッド・スクリュー」、樹脂用タッピングねじ「ノンサート®」などのシリーズがある。いずれも意匠登録をするなど、知財を持っている。

外資系企業に長くいた斎間社長は「日本の製造業は製品の機能を足すことは得意ですが、売る術を持っていません」と指摘。そして「ねじであっても、ブランド化していないと高く売れません」と付け加える。

各ブランドとも、新製品は年間1製品のリリースに限定している。「新製品が10個あったとしても、出し惜しみをします。ライバル企業が同じような製品を出したとしても、常にその上をいくためです」(斎間社長)と言う。

■来てもらう営業

自社製品を売り込む外回り営業はやらない。斎間社長は「お客さんに来てもらう営業を目指しています。つまり、本社=お店です」と説明。実際、お客さんを呼ぶ“仕掛け” もしている。

本社内には「蛍光X線分析装置」や「ねじトルク図形解析システム」など、特殊な測定器がずらりと並ぶ。そのため、こうした装置を持っていないお客さんは、同社に測定にやってくる。結果として、ねじ販売につなげているのだ。

また、斎間社長は全国のねじ関係企業に対し、そのノウハウを伝えるセミナーを行っている。商品知識から、顧客満足やプレゼン習得といった営業系カリキュラムだ。希望があれば出張もする。セミナー依頼が週4回入る時期もある。「御用聞き営業ではなく、技術営業ができる人材を育て、業界全体を志が高いものにしていきたいです」と話している。

(2017年9月号掲載)