住まいの産業 / ライフサイエンス

“家具職人+リフォーム”の新業態

家具職人+リフォーム。六郷クラフト(川崎市川崎区塩浜)は、特注家具の製作もすれば、特殊リフォーム・リノベーションも手掛ける。自前で木工所を持っており、お客さんのイメージに合わせた内装を具現化する。デザイン性が求められ、施工が難しいとされる店舗の内装工事に携わっている腕前を生かし、住宅リフォームにも進出する。

店舗から住宅までワンストップ

家具職人でもある峰島誠士社長が、相棒と2人で立ち上げた企業。店舗などで使用するいすやテーブルなどを製作。その一方で、造作工事も手掛ける。

造作工事とは、柱や梁などの構造部分以外の内装工事だが、同社の場合、峰島社長自ら現場に入って施工する。店舗内装は通常、家具の選定から施工まで、複数の業者が入るが、同社はワンストップ。ゆえに、依頼者である設計事務所や店舗オーナーの完成イメージに限りなく近い仕上がりになるという。

■住宅リフォームに進出

もともと、大学建築学科を卒業後、横浜の設計事務所に就職。公共施設などの設計をやっていたが、現場で汗をかく職人たちを見てうらやましく感じた。元来、ものづくりも好きだった。

30歳近くで一念発起し、職業訓練校に入学。家具づくりを学んだ。卒業後は都内にある店舗什器の製造企業に入り、工房で職人となった。やがてフリーランスの職人などを経て創業、現在に至る。

家具職人である峰島社長と、造作のプロである相棒が一緒になったことで“化学反応”が起こり、家具づくりからリフォームまでを一手に担う、現在のビジネスモデルが生まれた。今では年間100件の案件に追われている。

店舗内装の世界でやってきた同社だが、コロナ禍前から住宅リフォームにも進出。元請け企業から受託している。「店舗内装の分野では、間接照明にしたり、天井にも板を貼ったりするなど、細かいこだわりに対応しなければなりません。そのノウハウがありますので、住宅リフォームでもデザイン性のある難しいものなどの依頼が来ます」(峰島社長)。

■BtoC事業も

コロナ禍前に住宅リフォームに進出して多角化したことが奏功。飲食店などの改装工事が減少した分、在宅時間が増えたことで住宅リフォームの仕事が伸びた。

現在、木工所があることの強みを生かし、BtoC事業にも乗り出す。工房ではスケボー愛好家からの依頼で、半円状の「ランプ」を製作するなど、特殊な木工品にも対応する。

今後は「木工できるものがあれば何でも受けていきたいです」(同)としており、事業のさらなる可能性を追求している。

(2022年9月号掲載)