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安全安心の惣菜、海外に羽ばたく

安全安心の日本食を海外へ─。惣菜や漬物などを製造販売する太堀(おおほり、横浜市港北区新吉田東)が海外市場に進出しようとしている。飲食店向けの業務用惣菜のほか、スーパーなどにも置かれている惣菜商品の生産を半世紀以上手掛ける老舗企業だ。海外での日本食(和食)ブームを追い風に、まずはアジア市場を開拓する。「日本食の良さを知った訪日外国人が帰国後も食べるようになるため、これからはますます海外に広がります」(渡部隆夫社長)としており、海外事業を育成していく。

日本食ブーム追い風にアジア市場開拓

■1300種を生産

1960(昭和35)年設立。栃木・日光市内に主力工場を置く。生産量は月産800トン。種類は、漬物も入れると和洋中で計1300種に上る。ザーサイやメンマ、高菜などがあり、大手飲食チェーンなどにも提供する。有名焼肉チェーンで出されるナムルの一部や、牛丼チェーンの高菜なども手掛ける。

もともと和食から出発したこともあり、あえ物や煮物などの豊富な商品構成も強み。加えて、プライベートブランド(PB)商品やスーパーなどに流通する自社商品もそろえる。「おかずは消費者の飽きも早いので、年間20~30の新商品を常に開発しています」(渡部社長)とするほど、開発スピードも速い。

創業以来、長年にわたり惣菜業界で活躍できているのは、「殺菌」を施す製造技術をいち早く確立したことが大きいという。同社では全惣菜をおいしい状態のまま殺菌して出荷している。これが惣菜を“日持ち”させることにつながり、フードロス解消にもなる。飲食店にとっては大きなメリットだ。

現在、業務用惣菜などの供給先は全国で大小2500社。PB商品などの特注品開発も積極的に受託していることも他社にはない点だ。

■シンガポールなどに輸出

そんな同社が視野に入れるのが海外ビジネス。国内市場はコロナ禍や少子化の影響で縮小傾向にあるものの、海外は逆にビジネスチャンスがあるという。

農林水産省によると、海外における日本食レストラン数は2021年で約15万9000店。年々増える傾向にある。

すでにシンガポールやベトナム、タイなどの日本食レストラン向けに輸出を始めた。

「海外は日本食が人気です。特に東南アジアはどこに行っても和食レストランがあります。やはり日本の食品はおいしいからです」と渡部社長。社内では兼務だが海外担当も置いた。社長自身もインドネシアへ市場調査に出向くなど積極的だ。

一方、「国によって許可されている添加物が異なるため、対応する必要があります」と話しており、海外での販路拡大のためにはローカライズした商品の開発もしていくという。

「惣菜」にほれ込み半世紀以上。安全安心で、これまで継承してきた味と技術が今、日本食ブームを背景に海外に羽ばたこうとしている。

(2023年6月号掲載)