成光工業(川崎市川崎区浅野町)は、金属板製の配線「ブスバー」の難加工対応に実績があり、専門のネット販売サイト「ブスバー通販.com」も運営する。現在、電気自動車(EV)など大容量電流向け需要の拡大に対応中だ。同社の強みは、ブスバーや端子台などの金属加工事業を中心に、コンパウンド事業やIT事業など新規事業を次々に立ち上げていること。1967年の創業から、時代と経済環境の変化に合わせて事業内容を自在に変化してきている。
コンパウンドやITなど新規分野も次々
■少量から量産まで
ブスバーは金属の板を加工して配線に使うもので「導体棒」とも呼ばれる。
導電性の高い銅製が多く、大電流を流す配電盤や産業機器、変電所設などで使われている。同社では細長い板を縦に曲げるだけでなく、水平方向に横へ曲げる「エッジワイズ曲げ」の技術を持ち、装置のレイアウトに合わせて複雑な曲線形状のブスバーを短納期で加工できる。
2013年のブスバー事業開始と同時にネット通販の専用サイトも開設。特注の一点ものから量産まで短納期対応している。
電気自動車は動力源として大容量の電流を扱い、ブスバーが大量に必要だ。量産時はプレス金型での加工となるが、同社では量産前にブスバー試作の需要があるとみている。すでに引き合いもあり、対応を強化していく。
■CNF分野にも進出
同社は家電向けの小型ばね製造を中心に創業し、黎明期の携帯オーディオ向けの部品の大量生産を担当していた。80年代の家電製品の海外生産シフトを受け、精密プレス金型による端子台やねじ端子事業を展開してきた。ブスバー事業は、精密プレスで蓄積した金属の曲げ加工技術を応用して参入している。
2018年には注目を集めた新素材「セルロースナノファイバー(CNF)」の応用研究を始め、20年にスキー・スノーボード向けワックス販売などのコンパウンド事業を開始した。
現在は、独自の在庫・生産管理システムを開発するIT事業にも着手し、数年後の外販開始を目指している。
同社の松尾教弘社長は、「リーマンショック時に売上高が8割減となり、単なる下請けでなく設計に近い上流工程を担当する必要性を痛感し、新規分野の拡大に取り組んできました」と話している。