住まいの産業 / ライフサイエンス

急傾斜地の地盤を強化、地質学の専門家が率いる企業の工法

環境地質(川崎市川崎区貝塚)は、急傾斜地の土砂災害を未然に防ぐ「鉄根打設工法」を本格展開する。集中豪雨や地震による被害が増加する中、行政の急傾斜地対策の対象にならない5軒未満の個人住宅の裏山や、古く軟弱な造成地に建つ工場などを対象とした簡易な地盤強化策として普及を図る。

公的対策から漏れた住宅も施工

同社は2人の地質学者が1991年に創業。地質学や土木・建築だけでなく、対象地域の環境・生態系や土壌・地下水、災害リスクなど幅広い観点から地域開発を考える事業を展開してきた。

現在は社員数20人で博士号や測量士、地すべり防止工事士といった各種資格を持つスタッフがそろう。行政を主要顧客として調査、分析、コンサルティング事業を展開し、年間売上高は4億円となっている。

近年の災害の多発で、仮に企業の保有地の斜面が崩壊して被害が出れば、企業が責任を追及されるリスクも高まっている。「あらゆる人が地質リスクを意識する時代になりました」(小坂英輝社長)といい、同社では民間企業や一般個人向けにもリスク回避の提案を強化することにした。

「鉄根打設工法」は、同社が独自開発した技術で、樹木の根が斜面を強化するのにならい、直径16ミリメートル、長さ1メートルの鉄のパイプを4〜5本、角度を変えて打ち込み表層崩壊を防ぐ。

パイプの表面には直径5ミリメートルの穴を開けてあり、地滑りの原因となる水を排出する。施工前の地盤調査も人力で表層の厚みやせん断力を測る「土層強度検査棒」を使い、低コストで簡易に状況を判断する。

費用は10メートル四方に鉄根を10セット程度使うケースで調査・測定から施工まで100万円程度だ。

行政による公的な「急傾斜地崩壊危険区域」の指定は、5軒以上の民家がある場所に限られる。しかし、そもそも家屋が建っていると重機が入れず、ボーリング調査も地盤強化工事も行えないことが多いという。

通常の対策はボーリング調査だけで100万円近く、工事費は数百万円になるため、個人では負担が重い。「公的な対策の対象にならない個人の住宅がリスクに直面していて、対策を急ぐ必要があります」(小坂社長)。行政向けに技術講習会を開くなど協力して対策を考えていく方針だ。

(2025年9月掲載)