水産物製造加工、カリフッドが、製造加工拠点のある北海道で、地元と共生するSDGs活動に力を入れている。地域の業界では“破格の時給”を打ち出し、非正規雇用から正社員への登用にも注力。「小さな部品から、パソコンやテレビに至るまで、会社で購入するものは、地元店や地元企業最優先を徹底しています」と、井出敬也社長。社内では大手通販サイト「アマゾン」の利用を禁じ、市内企業への発注でも値下げ交渉はしない。事業継続には地域との共生が不可欠との思いがあるという。

調達は地元の店や企業で

「カズノコのスペシャリスト」として、ニシンの買い付けから製造加工、販売までワンストップで手掛け、業界シェアの約2割を占める。製造加工の重要な拠点として北海道岩内町の工場を10年前に新設した。

しかし、同地域では過疎化が進み、人材を募集しても思うように集まらない。外国人実習生も採用してきたが、コロナ禍で入国が難しい状況が続く。「先を見据えて地元の若者でも働きたいと思ってもらえるようにしなければ」と、SDGsに本腰を入れることにした。

「SDGsなんて、カッコつけているようで当初は嫌でした」と、井出社長。しかし、自社の事業だけが好調でも、取引先や地域の企業も元気でないと町から人は出て行ってしまう。人がいなければ働いてくれる人も来ない。それなら、自社ができる地域の課題解決は何なのか、真剣に考えるようになったという。

■ネット通販を禁止

外部からの新規参入だった同社にとって、これまでは地域との接点がほとんどなかった。SDGsにまつわる活動は「地域も一緒に元気になるためのもの」と位置づけた。

調達面でも、以前は便利さから活用してきたネット通販・Amazonなどは禁止、地元の店舗で直接購入するよう徹底する。その際、自社の名前で必ず領収証を切ってもらうようにしているという。「地域でお金が回るようにするのと同時に、領収証をもらうことで自社のことも知ってもらえたら」(井出社長)。

地域同士をつなぐ取り組みも計画する。カズノコを取った後に廃棄するニシンの身から作る堆肥を使って収穫した米や果物を自社が購入、本社のある東京・大田区などのこども食堂に提供するプロジェクトも動き出した。北海道岩内町のメロン農家も協力し、この夏には約150玉の岩内メロンをこども食堂にプレゼントする予定だという。

(2022年5月号掲載)