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和菓子を冷凍、鮮度維持で提供

需要低迷はアイデアで克服―。若者の和菓子離れが進む中、老舗店の仙臺屋(川崎市川崎区鋼管通)が奮闘している。繊細で形が崩れやすい和菓子の一部商品を冷凍して出荷。持ち帰った時に鮮度よく食べられる販売方法を考案。茶道教室向けにカスタマイズした「茶席菓子」や、若者向けの「生チョコどら焼」などに採用している。

仙臺屋、新需要創出でアイデア続々と

葛を使った冷たいアイスキャンディー「葛シャリ」で有名な大正初期創業の仙臺屋総本店から52年前にのれん分けした店。現在は市内2店舗を構え、家族4人で切り盛りする。ただ、洋菓子の台頭などで、時代とともに和菓子離れが進み、経営環境は厳しさを増す。

そんな中でも奮起し、和菓子の“新需要”を創り出そうと前向きな姿勢を崩さない。「日本の食文化である和菓子に興味を持ってもらいたい」との思いを込める阿部正弘店主が、日々アイデアを練り続けている。

その一環として着目したのが冷凍技術。「家庭の冷凍庫と違い、保存温度が低いので、できたてを冷凍すれば品質は変わりません。冷凍することで消費期限が延び、食品ロス削減にもつながります」(阿部店主)としており、茶席菓子などに採用した。

その茶席菓子でも、主催者と話し合い、茶道教室やお茶会の目的に応じて同店が作るセミオーダーメードも受託する。

■固定観念捨てる

一方、「生チョコどら焼」も冷凍した状態で提供。帰宅までの道のりで解凍が進み、ひんやりしたチョコレートケーキのようなどら焼きが味わえるという。

このほか、クリーム入りの和菓子や、冷凍ゼリーを餡(あん)に見立てた大福も続々と開発する。

阿部店主は「固定観念にとらわれず、今後も新素材や新しい製造方法に挑戦していきたいです」としており、和菓子業界に新風を吹き込もうとしている。

(2022年9月号掲載)