機器・装置・製品/ロボット

創業者支え続けた半世紀

プラスチック業界に革命を起こそうと、生涯現役で研究開発に打ち込んだ日本油機(相模原市中央区東淵野辺)創業者の故・市川十四男前会長の妻・市川美代子さんが、このほど自伝「流水 花筏(はないかだ)」を自費出版した。

市川美代子会長が本出版

プラスチック成形機のスクリューを設計する同社の会長も務める美代子さんは、現在85歳。九州で生まれ育ち、日本グラウト工業(現・日本基礎技術、東証一部)に入社し、社会人になってからは仕事と茶道に没頭。47歳で市川前会長と知り合い結婚し上京した。以来、市川前会長のプラスチック一筋の人生を裏方として支えることになる。

1987年に日本油機が設立され、美代子さんは専務として資金繰りや営業に奔走した。ときには現場を手伝うこともあった。

モノづくりの世界では女性が極めて珍しかった時代。道のりは決して平たんではなかった。それでも「いつでも一生懸命な気持ちを持ち続けた」という市川さんは、出会いに恵まれ、それとともに会社も成長していった。

■プラ業界に一石投じ

夫の市川前会長は晩年、もはや不要とされてきた半世紀前の成形技術「ベント式」に再び目を付け、それを改良。そしてプラスチック成形の効率を飛躍的に高める“温故知新”の技術を編み出し、業界から注目された。美代子さんはその想いを受け継いで、今も「ベント式」の普及に奔走している。

本を出版した美代子さんが若い世代に伝えたいことは「常に誠実、そして親身であれ」ということ。そして「若い人たちには希望を持って生きてほしい」と話している。

(2019年4月号掲載)