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再生医療用細胞、産業化に道筋

 

再生医療分野に革命を起こそうと、県内ベンチャー企業が奮闘している。理化学研究所出身の團野宏樹CEOと和光純薬工業出身の福田雅和CTOが創業したナレッジパレット(川崎市川崎区殿町)だ。同社は、遺伝子解析技術と人工知能(AI)のデータ解析技術により、安定した品質確保が難しかった再生医療用細胞の課題を解決するプラットフォームを開発。同分野の産業化に道筋をつけた。

品質安定化に貢献

再生医療用細胞は、治療法が見つかっていない難病にとって“革新的な医療”と期待される。ただ、生きた細胞を用いるため、品質に「ばらつき」が生じやすいのがネックとなっている。細胞診断技術が確立されていないことが原因の一つとされるが、そのような状況下で、たとえ長期間、費用をかけて再生医療細胞を研究しても製品化するにはリスクがある。

それに対し、同社は再生医療用細胞の培養を最適化し、品質を安定させた細胞製造を可能とするプラットフォームを開発。細胞状態のビッグデータを解析する「全遺伝子発現解析技術(培養性能評価)」を応用したことで実現した。

同社は、このプラットフォームを製薬企業や研究機関に提供。これにより、産業化に向けた動きが始まった。同プラットフォームを利用すれば、従来に比べ細胞の収量は10~100倍になり、機能性の維持も図れるという。製造ロット間でのばらつきも減り、1サンプルあたりの実験コストが抑えられる。

創薬開発には膨大な時間と資金が必要とされる。しかし、現在の技術で治すのは難しいが「再生医療なら…」と期待される病気も数多くある。また、いち早く産業化することで、同分野における日本の国際競争力強化も期待される。

團野CEOは「アンメット・メディカル・ニーズと言われ、世の中にはまだ治療法の見つかっていない病気は多くあります。私たちの技術で世の中に一つでも多くの薬が増えたら…」と語っている。

(2021年6月号掲載)