住まいの産業 / ライフサイエンス

公園の”山小屋”は地域づくりの場 PFI受託の建築士が管理

ピークスタジオ一級建築士事務所(川崎市高津区子母口)は、川崎・武蔵新城を中心に建物だけでなく地域コミュニティを作る設計事務所として活動している。代表作品の「TACHIBANA HUT(たちばなハット)」は、子母口の橘公園内に立つ多目的施設で、川崎市が公園運営に民間活力を導入する「Park-PFI」の第2弾案件として2024年6月にオープンした。公園の運営自体を同社が受託した形で、共同代表の藤木俊大さんは、今や一級建築士であると同時に橘公園の管理人だ。

カフェスタンドも併設

同社は有名設計事務所の若手が独立する形で15年に設立、当初から地域コミュニティを考える設計事業を展開し、藤木さんと共同代表の佐屋香織さんの二人が地域の仲間と連携して公共施設・住宅の建築設計やリノベーションを手掛けてきた。

「ヒュッテ」風の大屋根が特徴

「TACHIBANA HUT」は川崎市が橘公園の老朽化した旧公園事務所の活用計画を22年10月に公募。「地域コミュニティづくり」を打ち出したピークスタジオの案が大手企業を抑えて選定された。

橘公園は面積1万6916平方メートル、広場を囲む緑が豊かで子どもたちや家族連れが憩う。広場に面した「TACHIBANA HUT」は、欧州の山小屋「ヒュッテ」のような大屋根が特徴で、旧管理事務所の骨組みを生かしながら1階はレンタルスペースとシェアキッチン、2階にはコワーキングスペースなどを設けた。

1階はレンタルスペースとシェアキッチン

地域の人々が会合や勉強会、料理教室の会場に利用し、時には広場も使ったマルシェや屋外映画上映会を企画。利用料金を抑えるため、コインパーキングの売り上げなどでも収益を確保しているという。

また、隣にはカフェスタンド「タルトドットコーヒー」を併設。大通りから人の流れを誘引する。武蔵新城の駅前で自家製タルトが人気のカフェを運営する篠宮良平さんが、近所に事務所があった藤木さんに誘われて2号店「橘公園店」として出店した。

「地域コミュニティも設計」

人と人のつながりから「TACHIBANA HUT」が生まれ、そこでまた新たなコミュニティが生まれる。

「建物だけでなく、地域コミュニティという“ソフト”も設計する事務所は珍しいようで、最近は各地の自治体からも相談をいただくようになりました」(藤木さん)と、コミュニティの輪はさらに拡大中だ。

(2025年4月掲載)