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光のコントロール技術、植物工場にも

市場拡大が期待される植物工場。その業界で、カメラのフラッシュライト製造企業が挑戦している。芝川製作所(横浜市港北区綱島東)は、カメラ用フラッシュライトで世界シェア50%超を占める中小企業。「光をコントロールする」というフラッシュライトの技術を応用し、植物育成用LED照明器具を開発。「太陽光に近い波長を再現した」(山田大樹社長)という製品もあり、他社製より生育が早く、省エネも実現した。参入から5年ほどたつが、このところ採用する企業が急増しており、今年度は大口受注も決定。年2~3万本を販売する見通しだ。

世界シェア5割のノウハウでLED 照明

1967年3月創業の同社は、主にカメラに使われるフラッシュライトを生産。工場では「アルミ真空蒸着技術」を用いて反射鏡を生産するほか、部材調達から、金型生産、成形、アセンブリー、化粧箱詰めなども一貫して手掛けることもある。

コンパクトデジタルカメラや一眼レフカメラ業界は、日本メーカーの世界シェアが圧倒的に高い。同社はほとんどの大手カメラメーカーに納入しているため、おのずと高シェアになっているという。

フラッシュライトの技術は、いわば「光を制御する」という技術。そもそも、光は360度に広がるため、被写体に対して効率よく照らすには「光を平たくする技術」(山田社長)が求められるという。創業以来、そうしたノウハウを蓄積している。

■市場拡大を期待

新しく挑戦する分野として着目したのは植物工場。当時はまだ参入企業が少なかったため、中小企業であっても勝負できるとの経営判断があった。矢野経済研究所の調べによると、完全人工光型の植物工場の市場規模は拡大傾向としており、運営市場規模(工場野菜生産者出荷金額ベース)は、2024年度には360億円に達すると予測。高齢化による労働力の不足やコロナ禍で外国人農業研修生の確保が難しくなっているのが背景だ。

同社は約3年前にLED照明を発売。現在は2種類(白色タイプ、UVタイプ)を展開しており、受注生産にも対応。全国に普及しつつある。

参入当初の同社にとって、植物工場は未知の領域だったため、大学農学部発のベンチャー企業と連携するなどして、ノウハウも蓄積していった。

■生育早く省エネ

同社製のLED照明は、他社製と比べて平均1割は生育スピードが速いとする。

例えば、UV(紫外線)タイプのLED照明の場合、UVのほかに白、赤、遠赤外線といった4種類のLEDを実装。植物が好む“太陽光に近い光”を照らす。

また、すべてのLED照明製品では、フラッシュライトのノウハウを活用。中でも、照明に組み込むリフレクター(反射鏡)は、フラッシュライトと同じアルミ蒸着法を採用した。

光をコントロールする知識により、無駄なく、強すぎず弱すぎない最適光を出すため、実装するLEDの個数や配置なども工夫した。「出力したLEDの光を最大限発揮し、漏れる光も防ぎます」(鳥山拓生課長代理)と語る。

■大手にはない「小回り」

普及には、中小企業ならではの“小回り”を生かす。顧客ニーズに応じ、現場を下見したり、設計図面を見たりして導入前からコンサル。LED照明の効率的な設置方法などを提案する。

これにより、余分な照明数などを減らし、事業者にとっては悩ましい電気代の削減にもつなげている。「大手企業はここまでやりません」と山田社長。すでに国内市場のみならず、海外での普及も見据えており、近く北米市場にも切り込む。

(2022年7月号掲載)