「塗装は作品です」。住宅の屋根・外壁塗装を手掛ける、タカラペイント(川崎市宮前区平)の宝田信幸社長は力を込める。1級塗装技能士の資格も持つ宝田社長の塗装に対するこだわりは強い。同じ塗装でも価格を変えずに「美しく魅せる」「高級感を出す」ための手間を惜しまないからだ。そんな同社は、お客さんに対する会社独自の「助成金制度」を新設。お客さんが地球温暖化防止につながる遮熱塗料を選んだ場合、施工費の一部を同社が負担するという試みだ。
独自の助成金制度も新設
■塗装こそ技術
宝田社長は塗装一筋30年以上の職人。川崎市塗装協会事務局長や関西ペイントリフォームサミット理事も兼務。女性も含め7人の職人集団を束ねるプレイングマネージャーでもある。現在、川崎市内や横浜市北部を中心に年間100件ほどを施工。このほか「台風被害などに火災保険が使えることも意外と知られていません」(宝田社長)と、火災保険の申請サポートも手掛けている。
基本的な技術を身に付ければ比較的独立しやすいとされる塗装業界。低価格や営業力を売りにする同業他社もしのぎを削るが、その中でも“本物志向”を貫く。
「塗装は職人によって仕上がりが全然違います。要はいかに手間をかけるかなんです」と宝田社長。例えば、屋根・外壁塗装の際、通常は1、2階とも同じ色で仕上げた方が手間なく材料費も浮く。
それに対し、同社は、何かしらの“スパイス”を加える。1、2階を色分けするほか、時には立体感を持たせる「ダブルトーン塗装」なども駆使する。「塗装こそ技術が求められる仕事です。見た目は同じでも、5年後、10年後に品質の違いが分かってきます」。
■独自のサービス
新たに始めたのが「地球温暖化防止対策助成金」とする独自サービス。温暖化防止のためには、産業部門だけでなく、家庭部門の取り組みもカギとなる。環境対応に熱心な東京都22自治体では、遮熱塗料を施す場合に、助成金が用意されているが、県内には存在しない。「だったら当社独自でやってしまおう」と考えたのだ。
具体的には、同社に屋根の遮熱塗装を依頼したお客さんには“助成金”として1平方メートル当たり1000円を値引きしている。「お客さんに喜んでもらい、社会貢献にもつながります」と、同サービスの周知を始めた。
一方、急増するリフォームトラブルを防ぐため、消費者に正しい知識を身に付けてもらう啓もう活動にも力を入れる。
その一環として宝田社長は「失敗しない塗装工事 7つの防衛策」を自費出版。悪質な業者を見破り、トラブルを回避するためのノウハウをまとめた。そこでは、業界の実情や価格のカラクリなど、関係者でしか知り得ない内容までも公開している。
「塗装やリフォームの訪問営業を受けた人たちからの相談がよくあります。内容はひどいものです。正しく業者を選んでもらい、業界のイメージ向上にもつなげたいです」と語る。
また、最近では地元自治会のゴミ箱の一部を無償で塗装するなど、地域貢献にも乗り出す。「地域密着が一番よいと思っています」としており、地域とともに発展する企業を目指しているという。