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中小企業開発のIoT電流計、脱炭素化の時代に普及

コバヤシ精密工業(相模原市南区大野台)発のベンチャー、エニマスが開発した「ポータブル通信電流計・ENIMAS(エニマス)」が急速に普及している。施設や工場などで、設備ごとの電力使用量・二酸化炭素(CO2)排出量をリアルタイムで見える化できるデバイス。大手飲食チェーンで本格採用され、地元・相模原市も導入して市庁舎の脱炭素につなげている。現場発のアイデアから生まれた製品だが、今や本業の金属加工を超える成長を見せ、文字通りの「脱下請け」を実現する。

大手飲食業や自治体が採用

■1台で最大8チャンネル監視

エニマスは、分電盤にある各ブレーカーに専用クランプセンサーを取り付けてデバイス本体と接続する。

ブレーカーにセンサーを取り付ける

ブレーカーにセンサーを取り付ける

デバイス1台当たり最大8台(8チャンネル)の設備を監視、消費電流値を測定。集計したデータを、無料の専用アプリを通じ、電力量や電気料金、CO2排出量として示す。

同社によると、電力使用量を見える化するシステムやツールは数限りなくあるものの、どれも施設全体を表示するもの。「どんな設備が、どの程度の電力を消費しているか」が分かるものは少ない。大手企業も同様のシステムを販売しているが、「中小企業が導入できる価格ではありません」(小林昌純社長)という。

その点、エニマスはポータブル型のため、中小・小規模企業でも導入しやすくなっている。

■大手飲食チェーンが導入

飲食業界にも広がる。大手飲食チェーンではエニマスを試験導入する際、各店舗の電力使用量をモニタリングした。その結果、同じ稼働率の店舗であっても、電力使用量に極端なバラツキがあることが判明した。

小林昌純社長「自社開発は継続が大事」

小林昌純社長「自社開発は継続が大事」

2020年10月、当時の菅義偉首相が所信表明演説で、国内の温暖化ガスの排出を50年までに「実質ゼロ」とする方針を表明。大手企業もこれに追従する形になり、サプライチェーン(供給網)にも広がっていった。

現在、エニマスは「23年度神奈川工業技術開発大賞・未来創出賞」や、「省エネ大賞・省エネルギーセンター会長賞」「第49回発明大賞・発明功労賞」など、数々の賞を受賞するまでになっている。

「自社製品は続けていくことが大切です。いつか時代は来ます」と力説する小林社長。4年後には売上高21億円、IPOも目指している。

エニマスは何も最先端技術を駆使しているわけではない。ありそうでなかったことに着目し、ニーズをうまく捉えた。イノベーションのタネは、身近にあるのかもしれない。

(2024年5月号掲載)