機器・装置・製品/ロボット

ワイン用のブドウの枝からバイオマス食器

国の構造改革特区制度によるワイン特区「かわさきそだちワイン特区」の認定を昨年に県内で初めて受けた川崎市でワイナリーを営むカルナエスト(同市麻生区岡上)が、バイオマス食器を開発した。剪定(せんてい)や間引きのために伐採・処分していたワイン用ブドウの枝や、禅寺丸柿の枝などを素材として活用した。今後はデザイン改良やパッケージデザインを考案するとともに、生分解性プラスチック化し、来年の商品化を目指す。

「都市型農業」活性化に一役

都市農業の活性化を目的に市が実施する「農商工等連携モデル事業」によるもので、3~5歳の幼児を対象としたバイオマス食器を製作。トレーとスプーン、フォークのセットをそろえた。

開発は「地域応援プロジェクト」で学ぶ和光大学・表現学部芸術学科の学生たちと一緒に進めた。学生たちは市場調査に加え、幼児たちがどんなメニューをどのように食べているか、保育現場をヒヤリング。子どもたちが食べやすい形状、深さ、食べこぼしのないような溝加工などを考慮してデザイン、3Dデータを制作した。

バイオマスペレットの加工は、プラスチック成形、ユニオン産業(川崎市中原区)が手掛けた。同社は竹や麦などからバイオマスプラスチックを製造しており、コーヒーやサトウキビなども手掛けてきたが、地元の素材は初めてだったという。

今回、カルナエストは区内保育園のリトルピエノ保育園新百合ヶ丘ROOMの子どもたちに、農業体験で触れたブドウの枝や竹などを使って作られたバイオマス食器の試作品を贈呈した。食べこぼしが起こりにくく使いやすいことから「1歳のお子さんも上手に使えていました」と、同社の山田貢社長は語る。

■イチゴ栽培でスマート農業も

現在、加工した素材の成分分析も進めている。抗菌作用などバイオマス素材の機能性が認められれば、処分していたものに価値が生まれ、収益につながるからだ。

イチゴ栽培ではスマート農業も取り入れている。「都市型農業の6次産業化を成功させ、農業の担い手を増やしていきたいです」と、山田社長は力を込める。

(2021年5月号掲載)