子どもの置き去り事故が続く中、保育業界では対策が急務となっている。しかし、人手不足による保育士への負担増も大きい。そうした中、教育事業に20年以上携わるシステム開発企業、アルファメディア(川崎市中原区小杉町)では、子育て経験がある女性社員たちが立ち上がり、子ども見守りシステムを開発した。使命感を胸に社長に企画・提案し、わずか3週間で完成したという。
ICTで保育現場をサポート
■一人にしないから
「かいけつシリーズ『見守り(MM-AP01)』─ぜったい一人にしないから─」と名付けた同システムは、公園などでの園外活動での使用を想定する。
園児たちに「発信機」となる専用タグを、腕や専用ポケットのあるビブスに装着してもらう。保育士から一定距離離れると、専用アプリの入ったスマートフォンやダブレットが振動、アラートを鳴らす仕組みだ。併せて、どの園児が遠くに離れてしまっているかが画面上で表示される機能もある。
昨夏、猛暑の厳しい日に通園バスで園児の置き去り事故が起こった。それがきっかけで、保育施設の管理体制が問われ、法整備が強化された。
通常、園外活動時には、置き去りや行方不明を防ぐため、保育士たちが「目視」というアナログな手法で人数確認を徹底している。だが、相手は活発な園児たち。予測不能の行動は日常茶飯事。目視にも限界がある。
同社では、一連の置き去り事故を受け、子どもを持つママ社員たちが立ち上がり「こうした事故が二度と起こらないようにしたい」と、見守りシステムを企画。小湊宏之社長もすぐにゴーサインを出した。
■社内外で協力
もともとは学校向けの出席管理システムなどを手掛ける企業。保育現場向けにも、大型モニターに児童の在園状況が一覧表示され、職員同士が情報共有できるシステムも製品化している。
今回の見守りシステムは、こうしたノウハウを組み合わせ、保育現場のニーズを踏まえて応用したことで短期間で開発できたという。
特徴あるネーミングや説明動画の制作は、若い保育士たちと同世代の社員の娘たちが、製品チラシは20代の若手社員が担当した。社内外を問わず、子どもたちの命を守るシステムを普及させたい気持ちで、全員が一致団結した。
導入費用は、専用システム1ライセンスとタグ(発信機)30個、格納ポケット付きのビブス30枚のセットで約28万円。できるだけ多くの施設で使ってもらいたいため、価格を抑えたという。ランニングコストも電池交換費用のみ。
開発を担当した金丸和歌子さんと本所裕美さんは「ICTの力で、子どもを預ける親にも、小さな命を預かる保育士にも、安心感を持ってもらえたら」と語り、普及に意欲を燃やしている。