日本油機(相模原市中央区東淵野辺)が提唱するプラスチック成形法が注目されている。もはや不要とされてきた半世紀以上前の技術「ベント式」の成形法に目を向け、それにプラスチックを知り尽くした職人のノウハウを融合させた。いわば“温故知新”の成形法で、導入企業のなかには、不良発生率ゼロになったケースも出ている。
温故知新の技術「ベント式」提唱
家電や自動車など、あらゆる製品や部品に使われているプラスチック。さまざまなカタチに成形するには「射出成形機」が欠かせない。原料となる樹脂ペレットを溶かしながら成形機の金型に投入、成形していく。
現在、射出成形機は「ノンベント式」と呼ばれるタイプが主流。ところが、樹脂ペレットは、水分などの不純物を含んでいるため、前もって長時間乾燥させる工程が必要となる。なかには乾燥に3時間以上かかる材料もあり、手間と時間を要するという。
日本油機が提唱するベント式は、成形機に「ベント孔」と呼ばれる穴が開いているのが特徴だ。そこから、原料に含まれる不純物などが排出されるため、乾燥工程は不要になる。
■樹脂漏れも防止
もともと、半世紀以上前の射出成形機は、このベント式が主流だった。ただ、旧来型ではベント孔から溶けた樹脂が漏れてしまう難点があった。
その点、同社のベント式は、装置に対し、樹脂の供給を適量にコントロールする「定量供給装置」を併用。シリンダー内のスクリューも改良することで樹脂漏れを防ぐ。
同社では今後、従来の射出成形機に対し、一連の成形法が行えるように改良を施す。すでに、8月以降10台以上を納入しているという。
市川博章社長は「問題を抱えていないプラスチック成形の工場はないと思います。できれば、どの工場にもベント式も置いてほしいです。成形不良がなくなったお客さんもいます」と説明。普及に向け全力投球している。