タイガ(東京都大田区田園調布)は、セラミックスなど極めて硬いものを切削・研磨する「ダイヤモンド工具」の専門メーカー。ただし、大手工具メーカーや商社にOEM(相手先ブランド)供給しており、自社製品の営業活動は行っていない。ダイヤモンド工具を「作る技術」だけに集中して取り組む専門家集団として好業績を上げている。

作る技術に集中する優良企業

■一つから特殊品製作

ダイヤモンド工具は、細かなダイヤモンドの粒を金属に接着して作り、軸付き砥石、ホイール、ヤスリなどさまざまな形状がある。

天然ダイヤは高価で入手しにくいが硬度が高い。人工ダイヤは硬度はやや劣るが安価。それぞれの特徴を生かし、仕上げ面の粗さに合わせて粒の大きさを選択する。

ダイヤモンド粒の母材への接着方法はいくつかあるが、タイガはめっき技術を応用し、金属の表面に粒を薄く一層だけつける「電着法」にこだわっている。

樹脂の接着剤とダイヤモンド粒を金型に入れて焼き固める方法と違い、電着法は金型が不要なため自由な形の工具を製作できる。極めて小径のヤスリや特殊な形状の工具など、顧客の要望に合わせた特殊品を一つから作れるのが強みだ。

■考え楽しむものづくり

生産拠点は、東京都大田区の東京工場と福島県の白河工場が少量多品種の工具製造を担当。山形県鶴岡市の2工場が量産品や大型の工具を担当している。

顧客は完成品の図面を示し「この部分を削るのに適したダイヤモンド工具が欲しい」とオーダーすることが多く、タイガの技術者がそれぞれ母材の加工方法やめっきの条件、工程の順番を工夫して仕上げていく。

社員数は40人で、中途採用の若い技術者が活躍している。「基本的な工程を覚えるのは3カ月で、その先はずっと一人一人の技術者がそれぞれ工夫を続けていきます。工具は、ものづくりを支える最初の部分で、同じものがないから考える楽しさがあります」(谷昇社長)といい、社員の定着率が高い。

月2万本の工具を製造し年商は3億8000万円、高い利益率を誇る隠れた優良企業だ。

(2024年3月号掲載)