街で見かけるタンクローリー。生活を支えるLPガスなどを運ぶ重要な役割を担う。そのタンクローリーの「ホームドクター」とされる企業が、川崎市川崎区塩浜にある。極東運輸は創業以来、関東一円でタンクローリー輸送を手掛ける一方、県内では唯一、法定で定められた高圧ガスタンクローリーのタンク検査も受託する。「運送+検査」ができる企業は関東でも珍しい。そんな同社は、タンクローリーに関する知見を生かし、メンテナンスパーツなどの通販サイトを開設。専門的で判別が難しいパーツを、サイト上で分かりやすく表現し、1個単位からでも購入できる。これにより、ユーザーはパーツ1個を交換するため整備工場に出向かなくても済むようになり、セルフメンテナンスにも役立つ。
検査の知見生かし1個から提供
■年間140台を検査
タンクローリーを計22台保有。LPガスの貯蔵・出荷基地から、地域に点在するLPガスの充てん所への輸送を担う。
一方、高圧ガスタンクの検査や車両メンテナンスも手掛ける。「高圧ガス保安協会」の認定検査会社となっており、高圧ガス容器製造の最大手、日本車輌製造の指定工場にもなっている。
家庭用のボンベからタンクローリー、工場などの高圧ガスタンクは、法定の定期検査が義務付けられている。そのため、タンクローリーもクルマの車検と同様、同社のような専門会社で、法定の耐圧検査や分解整備をする必要がある。
同社によると、現在、関東一都六県で稼働するタンクローリーが約800台。その中で再検査が必要な約300台中140台程度を、同社が毎年受注しているという。「私たちはタンクローリーにとっての“かかりつけ医”のような存在です。故障個所の診断をします」(小谷哲雄社長)。
■ネット通販で利便性向上
そんな同社が新事業として始めたのが、メンテナンスパーツなどの通販サイト「ファーイーストパーツショップ」(https://kyokutolorry.base.shop/)だ。
漏れを防ぐ「Oリング」や表示ステッカーなどは検査資格のないドライバーでも交換できる。タンクローリーには、そうしたパーツは多数あるものの、そもそも種類が多いため、特定が難しい。
たとえ分かったとしても、メーカーは1個単位では販売しない。実際、整備工場である同社にも電話やメールによる問い合わせが多数寄せられる。話を聞いてパーツを郵送するものの、実際は異なるケースも多々あったという。中には、パーツ1個の交換のため、わざわざ遠方からやってくる運送業者もいた。
販路開拓のツールにもこうしたことから、通販サイト開設を準備。型番は分からなくても、パーツの拡大写真を表示することで、誰でも分かりやすくした。しかも1個単位からでも注文できる。「当社で交換実績があるパーツをそろえました。大手通販サイトでも扱っていないレアなものもあります」と小谷社長。もともと整備工場のため、パーツの在庫不足の心配がないのも強みという。
同サイトで簡単に仕入れられることで、ユーザーの利便性が大幅に向上するとともに、安全運行につながるセルフメンテナンスの促進にもなる。同社にとっても、サイトを通じ、これまで取引がなかった企業とも接点が持てる。
「今後は、お客さんが欲しいものがあればどんどん載せていきたいです」としており、同サイトの認知度向上や、ダンプカーなど他業種からの利用も働きかけていく。