金属加工・樹脂加工・その他加工

ジグ研削の同業に修理サービス

ジグ研削専門、イシイ精機(横浜市都筑区川向町)が、同業者向けに「ジグ研削機械」の修理および出張・メンテナンス事業を始めた。世界最高級の精度が出るとされる米ムーア社のジグ研削機を対象に、壊れた部品の修理や機械の出張メンテナンスを請け負う。「当社には長年のノウハウが蓄積されています。業界を盛り上げ、レベルアップや市場拡大につながることを積極的にやっていきます」と堺裕之社長。使い方に悩む企業に対しては、技術指導や人材育成などのノウハウも伝授していく。

業界復活へ新事業

■自社のノウハウ活用

ジグ研削は、「ジグ研削盤」と呼ばれる専用機で、ダイヤモンドなどでできた砥石を超高速回転させて対象物を1000分の1ミリメートル単位で磨くように削るニッチな加工技術だ。

同社はジグ研削加工専門で約50年。新潟と横浜の2拠点を擁し、社員14人ながらも20台近くムーア社のジグ研削機を保有している。

今回始めた修理・出張メンテナンス事業は、保有する修理履歴データや過去にメンテナンス職人たちから吸収したノウハウを活用する、同社ならではの事業。

ジグ研削盤の「研削ヘッド」と呼ばれる部品は、対象物と機械が接する一番先端にあるため故障も多く、壊れたり経年劣化によりベアリングが不安定になったりする。そのため、修理やメンテナンスが必要になることが多々あるという。

しかし、その際は、機械の製造元である米国に送るしか方法がなく、メンテナンスも首都圏であれば請け負えるところが1カ所しかない。その間、機械は止まり、生産計画にも影響する。

また、このところの円安やエネルギーコスト高騰が追い打ちをかけ、修理を諦め廃業を決断する会社も出ているという。「ならば、当社でどうにかできないか」(堺社長)と考えたという。

■「昨日の敵は今日の友」

堺社長は昨年、廃業する同業他社が増える中、業界全体を盛り上げなければ未来はないと、共存共栄を目的とした「ジグ研削のエコシステム構築プロジェクト」を立ち上げた。今回の新事業もその一環だ。

以前の業界は、ライバル同士という認識が強く、どの企業もノウハウを必死で隠し守ってきた。しかし、もはやそういった時代ではなく、“オールジャパン”として海外企業と競争するステージに入った。

そのため、かつての競争から「共創」につなげるため、ノウハウも伝えていく。

「ジグ研削が不可欠な市場は、まだまだあります。このプロジェクトを通じて、より多くの同業他社とつながり、業界内での技術伝承や人材教育も積極的にやっていきたいです。昨日の敵は今日の友ですから」と堺社長は語っている。

(2024年3月号掲載)