金属加工・樹脂加工・その他加工

ジグ研削、同業連携を呼びかけ

ジグ研削専門、イシイ精機(横浜市都筑区川向町)が、同業者やジグ研削機械を持つ中小製造業者に対して、同社が長年培ってきたノウハウを伝え、連携を目指す「ジグ研削エコシステム構築プロジェクト」を立ち上げた。後継者不足などでジグ研削を手掛ける企業数が減少する中で、相互協力により業界の活性化を目指す。堺裕之社長は「以前は自社のノウハウを必死で隠し守ってきましたが、昔の敵は今日の友。共に発展したいです」と語る。

ノウハウ伝授で業界活性化

ジグ研削の加工は、ものづくりでもニッチな分野とされるが、その特徴は高い加工精度。「治具研削盤」と呼ばれる専用機械を使用し、ダイヤモンドでできた「砥石」を超高速で回転させ、ワーク(加工対象物)を1000分の1ミリメートル(マイクロメートル)単位で削る。

堺社長は「ニッチな技術ですが、適切に技術を学び身につければ、マシニングセンターでは出すのが難しい加工精度でも容易に出せます。用途拡大も期待できます」と説明する。

現在、電気自動車(EV)モーターのコア部品の金型や医療系、航空宇宙分野のベアリング部品など、どれも“超高精度”が求められる最先端分野で採用されている。

しかし、業界では廃業が相次いでおり、技術継承が難しくなっている。さらに、ジグ研削の専用機械を製造販売する海外企業が日本市場からの撤退を決め、今後は修理や点検も依頼できなくなる。

そこで同社では、危機を業界全体で乗り越えていこうと、同プロジェクトを発足させた。

■競争から「共創」へ

同業者や専用機を持つが自信がない企業、ジグ研削を始めたい企業などが対象。要望に応じて、同社が有料でコンサルティングを行う。加工技術だけでなく、専用機械のメンテナンスや保守点検も自前でできるよう、幅広いメニューでサポートする。

ジグ研削を得意とする企業が増え、協力関係が構築できれば、これまで受注してこなかった分野からも仕事が獲得できるようになるという。競争から「共創」につなげるため、より多くの企業に働きかけていく。

「(業界における)従来の受発注の形態は、発注元~下請け~同業者という形で合理的な関係が築かれていました。しかし、今回のシステムは、これらの関係をより有機的に見直し、新しい方法で関わり合うことを目指しています」と、堺社長は明かす。

また、「この新しいアプローチにより、従来にはなかった関係が生まれ、予想もしなかった新しい発見があり、異なる受注の機会が生まれる可能性が広がります」と、期待を寄せている。

(2024年1月号掲載)